2015.12.13
自分で引き受ける
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
先日、専門家10人以上の打ち合わせに参加したのですが、とある弁護士の方が、冒頭、面白い話を紹介してくださいました。
仕事は、みんなでした方が効率よく、多くをこなせそうだけれど、実は無意識のうちに「手抜き」が発生し、かえって効率が悪くなってしまう、という話です。
紹介された『人はなぜ集団になると怠けるのか 「社会的手抜き」の心理学』(釘原直樹さん、中公新書)の一節をご紹介します。
「彼(注:フランスのリンゲルマンという学者さん)は綱引きや荷車引きといった作業で実験を行いました。すると、1人の力を100%とした場合、集団で作業をした場合の1人当たりの力の量は、2人の場合93%、3人で85%、4人77%、5人70%、6人63%、7人56%、8人49%という結果が出ました。・・このようにみんなで仕事をすることで、ときには力が半分となるほどに「手抜き」が起こっているのです。」
みんなで歌う。
みんなでごみ拾いをする。
みんなでサッカーゴールを運ぶ。
いろんな場面を思い浮かべてみると、さもありなんと思います。人数が増えれば増えるほど、意識してか無意識にかは別として、「1人くらいサボっても大したことない」と考えてしまうのでしょう。
話を聞きながら、ずっと前に町で出くわした場面を思い出していました。歩道のない細い道路を歩いていたのですが、曲がってその道路に入ってきたタクシーが、とんでもないスピードで駆け抜けていったのです。歩行者が多くいるにもかかわらず。
思わずタクシーの社名表示灯(あんどん)を見ると、「ふれ愛タクシー」(うろ覚えです)と。
おいおい、何がふれ愛だよ、これじゃあ危うく触れ合いじゃないか、と考えたことを覚えています。
もともとそのネーミング、それなりに思いをこめてなされたものでしょう。でも、いくら「上の人」が思いをこめても、問題は、運転手1人ひとりに浸透するかどうかです。1人ひとりが、自分自身が社名を、看板を背負っているのだという意識を持たないと、それこそ「1台くらいちょっと乱暴でもどうってことない」という「手抜き」が発生するのだと思います。
もちろん、「会計士」という職業も同じ。「ランナー」という属性も同じ。誰かに期待したり、誰かをあてにしたりするくらいなら、自分で看板を引き受ける意識を持ったほうが、少なくとも自分の周りは快適になるのではないでしょうか。