2015.07.05

割り切りと敬意のバランス

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 公会計財務書類を作成するにあたり、もっとも手間と時間を要するのが固定資産の評価ではないでしょうか。

 道路、橋梁、学校、公園、水路、河川・・・

 自治体総資産の95%前後が固定資産だと思われますので、その評価が重要なことは言うまでもありません。

 一方で、民間企業にはないような資産も多く(当たり前ですね)、その金額的評価が確立していない現状もあり、財務書類作成の最初の壁が資産評価といっても過言ではないでしょう。

 量が多い上に、難しい。

 たとえば道路1本とってみても、建設するのにいくらの金額を要したのか、正確に記録が残っているかというと、そうとも限りません。道路に限らず、上に挙げたような資産の管理は何らかの形で行なわれているにしても、金額情報まで管理していないケースも少なくないのです。

 そうすると、どこかで「割り切り」が必要になります。

 長さあたり、いくらで建設したことにする。
 面積あたり、いくらで建築したことにする。
 いっせいに、この日に完成したことにする。

 いろんな「割り切り」を決めないと、金額的測定ができないのは事実。ただ、その割り切り方には、精度の高いものから、粗いものまで、松竹梅のレベルがある。そんな話を、先日、先輩会計士の方がなさっていました。

 その通りだと思います。そして、話しながら考えが一致したのは、この「割り切り」があまりに粗いと、そもそも出てきた数字に対する信頼性も低くなり、その数字を使って何かの分析をしようという気にならない、ということ。

 数字を雑に決めると、その数字に対する敬意が薄れ、丁重に扱おうという気持ちが端から失われてしまう。そうすると、財務書類を活用しようという議論に身が入らない。そのリスクはあるでしょう。

 数字を出すためには、割り切りが必要。
 でも数字に敬意を持つためには、割り切りの精度が粗すぎてもいけない。

 そのバランスの中で、信念を持って割り切り方を決める、という覚悟が必要なのではないかと、私は思います。


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