2015.06.07

地方の稼ぐ力

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 5月29日、総務省統計局のホームページで、「地域の産業・雇用創造チャート-統計で見る稼ぐ力と雇用力-」というデータが公開されました。

 最初に知ったのは、日経新聞の小さな記事。「稼ぐ力」というサブタイトルに嫌な予感がしたことを覚えています。

 ホームページを覗いてみると、今回のチャートを作成したのでしょうか。野村総合研究所の方がお話になる動画が出てきます。その方は、地方創生のポイントを「強い地域経済をつくる」こととし、「強い地域経済の要素」は以下の4つである、と指摘されていました。

・景気が良い
・企業の業績が安定している
・所得が上がる
・グローバル競争に勝つ

 これって、要するに全部お金の話です。とんでもない話だと思いますが、もはや驚くこともありません。やっぱりそうか、と思う程度。地方創生にしても、女性登用にしても、少子化対策にしても、今それらしく語られる政策のほとんどは、経済成長やGDPといったお金の話しかしていない。お金が回れば人間は満足するのだという、極めて単純な、そして極めて侮蔑的な視点からしか政策が語られないことに、怒りを通り越して空虚さを感じます。

 この野村総研の方のおしゃべりは3分強ありましたが、その中で、人間の豊かさとは何なのか、とか、地域の人たちが光り輝くとはどういうことなのか、といったことは、ひと言も語られていません。

 上の4つを無条件に前提にできた時代は過去の話。むしろこれからは人口が減り、成長が止まっていく社会です。少子化問題は、問題でなく答えなのだ、とは多くの方が語っておられますが、であれば、まずいったん、その答えを受け入れる必要があるのではないでしょうか。

・人口は減る
・成長はしない

 その前提を受け入れた上で、それでも地域が輝くにはどうすればいいのか。人はお金のためだけに生きているのではありません。当たり前の話です。お金とは違う尺度で、豊かさを実現するにはどうすればいいか。

 今回の提言は、総務省から地域に向けられたのだと思いますが、中央から何かツールなりデータを提供して、地域がそれに基づいた対策を立てる、という構図自体に欠陥があるように思います。結局は、地域の人が輝かなければ創生も何もない。だとすれば、突き詰めれば地域の人が、1人ひとりが、自らの内なるものに火をつけないと、何も動いていかないのではないでしょうか。

 ツールは渡した。
 データは提供した。
 あとは、やるかやらないかは、地方の自己責任。

 もしそうした発想がかけらでもあるとするなら、これほど無責任なことはないと、私は思います。



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