2015.03.08

ビジネスチャンスという言葉

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

「ビジネスチャンス」って、何かいやな言葉だなあ。

 最近、とみにそう感じるようになってきたのですが、さっき、朝ご飯を食べていて、なるほど、そうか、と思いました。

 きっと、手段と目的を倒錯させてしまう言葉なのです。

 


 公会計のことで言えば、今年に入って総務省から、「統一的な基準による地方公会計マニュアル」が公表されました。全部で276ページもある大作で、自慢ではなくまだ読んでもいないのですが、その中には、今後平成27年度から29年度にかけて、全地方公共団体に対し統一的な基準による財務書類作成を働きかける、とも謳われています(既に昨年4月に示されていた方針)。

 先日、ある方と話しているときにもこの話題になり、これから3年間はシステム構築も含めた動きが活発になるだろう、とのお話でした。

 新しい制度が導入される。そこに、いろんな開発だとか、設計だとか、コンサルティングだとかのニーズが発生する。普通に考えれば、大きなビジネスチャンスかもしれない(というかチャンスなのだろう)。

 にも関わらず、私の体は、何かを拒んでいた。拒んでいたというよりも、何かが足りないと感じていた。

 何が足りないのかは、すぐに直感できました。

 熱です。何か、「熱いもの」がない、と。

 公会計が、まだまだ緒につき始めた10年以上前。たまたまご縁に恵まれて、公会計の理論的柱を数人で議論する機会に恵まれました。実際、その理論的支柱に基づき、試験的に導入しようとする地方公共団体に関与させていただくこともできました。

 そういった場で交わされていたのは、公会計を通じて住民といかに対話をするか、でした。あるいは、公会計を通じていかに社会を快適なものにしていくか。はたまた、公会計を通じてどのような政策を実行していくか、でした。実現可能かどうかはさておき、公会計を通じてこんなことができたらいいなあ、という未来像を描いていたのだと思います。

 公会計を使えば、こんなこともできるよね。そんな、今思えば夢のような話を、会議室で遅くまで、ときには居酒屋でビールを飲みながら、はたまた自治体の方と合宿なんかもやりながら、延々と繰り返していた記憶があります。

 当時を振り返ってみて、今、言えること。それは、当時熱く語り合えたのは、公会計を手段として捉え、その先に何ができるのかを、みんなが必死に考えていたということ。そういう場における公会計は、あくまで手段だったのです。みんな、その先を見ていた。だから「熱いもの」があった。

 


 今は、どうか。

 もちろん、公会計をどう使うかの議論は、これまで繰り返し繰り返し行なわれてきました。実際、有効な活用方法を駆使して、いろんな政策決定をされている団体もあるでしょう。

 一方で、さあこの3年間がビジネスチャンスだ、と息巻いている人たちもいるのだと思います。どうもそういう場に行くと、私のモチベーションは目に見えて下がるようです。手段のはずの公会計が、ビジネスの目的そのものになってしまっている。その熱量の方向転換に、体がついていけないのだと思います。

 先日も、ある自治体の方に「予算はありますから」と言われて、一気にテンションが下がったことがありました。決して、悪い意味で言われたのではありません。むしろ、気を使ってくださったのかもしれません。それでも・・・

 


 ひとまず、10年以上前の「熱いもの」の片鱗を探しに、276ページの旅に出ようと思っています。


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