2015.02.08
校長先生との会話
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
先日、とある高校の校長先生も務められた方とお話をする機会がありました。
こういう方が校長先生でいらっしゃる高校に通う子どもたちは幸せなんだろうなあ。
お話したのは、ほんの5分ほどの時間だったのですが、そう強く感じる何かをお持ちの方でした。
その「何か」を言葉で言い尽くすことは難しいのですが、具体的に交わした会話の1つが、「民間の発想は効率的か」という話題です。
大阪市などで、民間から校長先生が採用された。
その校長先生が、驚くほど高い確率で問題を起こしている。
そんな前提も踏まえて、「民間の発想」とか「効率性」が、果たして教育や、ひいては自治体の運営にあてはまるのか、という問題意識です。
話しているうちに思い当たりました。「そもそも民間企業は効率的なのか」という疑問に。
もちろん、企業全体では、利益を出さないといけません。企業全体として収益性や効率性が求められることは当然でしょう。
では、その中の「部分」を切り取ってみたら、どうでしょう。
たとえば、多店舗展開するチェーン店のA店は、効率的なのか。
たとえば、多くの品揃えをするお店の、A商品は回転しているのか。
おそらく、個々に細分化すれば、不採算の店もあれば、もとの取れない商品もあるはずです。では、そのお店やその商品が「不要」なのかというと、そうではないでしょう。不採算のお店や非効率な商品があるからこそ、別のお店や別の商品の売上が上がる、という側面が必ずあるはずです。
戦略的に、赤字でも出店し続けなければならない店がある。
戦略的に、不採算でも置いておくことで信用が得られる商品がある。
それを他のお店なり、商品なりで補いながら、企業全体としての収益性や効率性を高めようと努力しているのが、民間企業なのだと思います。
自治体が担う教育も、インフラも、すべては「足の長い」部門です。そもそも「効率」という考え方にそぐわない。インプットの成果が、1年や2年では測れず、10年、20年、30年といったスパンで現れ、しかも数字では測れない形で現れるものだからです。
もちろん、自治体が担う部門の中でも、効率を追求すべき仕事もあるでしょう。でも、効率を測れない部門を切り出して「非効率」だと責め立てたところで、不採算のA店を、その店だけの効率で測ってしまうのと同じ「全体としての非効率」を生み出すのではないでしょうか。
収益性。
効率性。
民間の発想。
そういった単一の言葉は、とてもシンプルで、わかりやすいものですが、現実はさほどシンプルでも、わかりやすいものでもない。その複雑さを念頭に置いた丁寧な議論が、積み重ねてきた財産を毀損させないためにもっとも必要なものだと、私は思います。