2016.06.19
50年経つと
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
公会計に基づく財務書類を作る。その際、必ずといっていいほどついて回るのが、どう利用すればいいのか、という話です。
日常業務とはプラスアルファで、新しい仕事をしなければならない。
しかも、利益を目的としていないため、統一的な指標がない。
そのような状況の中、「財務書類を作成してどうなるのか」という疑問が生ずるのも無理ないことなのでしょう。
先日もとある自治体でそんな話題になりましたので、50年くらい経たないと本当の意味での利用価値は出てこないのかもしれませんね、という話をしました。
50年というのは大げさなのですが、要するに、今ある資産がすべて入れ替わるくらいの時間です。既存資産の評価に関して、各自治体は開始残高を評価していますが、その計算はいわばフィクションと言っていいでしょう。
たとえば20年前に整備した道路や橋梁。その取得価額がいくらかなんて、ほぼ分かりません。そこで、幅員別の標準価格とか、そういった仮定を置いて計算されているのが資産評価です。
分析の前提となる数字の正確性が確保されるまでに50年。あと、もう1つ、実は報告会計としての財務書類そのものよりも大事なのは、その前提となっている「発想」ではないかと考えています。
その典型が「コスト」であり、「ストック」なのでしょう。
コスト意識を持つこと。
ストックの価値を認識すること。
そこから管理会計的な発想が生まれ、構築した資産を大事に使うという発想も生まれる。そのためには、複式簿記・発生主義の発想に慣れ親しむ必要がありますし、少なくとも10年は財務書類を作りつづけないと見えてこないものがあると私は思っています。
もっとも、自治体の担当者ご自身が数年で交代されていく中、その発想を根づかせるのが難しくもあるのですが。
ともかく、何かと「利用」が叫ばれますが、作る前から「何に使えるかが分からないこと」が公会計の不思議なところなのだ、くらいに考えた方が、気が楽になるかもしれません。