2016.10.23

公会計と修繕引当金

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 公会計の貸借対照表(BS)様式には修繕引当金がないのですが、どう考えればよいでしょうか。

 そんなご質問をいただきました。

 確かに、現在の総務省「地方公会計マニュアル」(H27.1)のBS様式に、修繕引当金は出てきません。ただ、固定負債の引当金の中に「その他」とありますし、そもそも公会計議論が始まった当時に公表された「公会計概念フレームワーク」(H15.3.25)では修繕引当金が登場します。

 もっとも、この10年の間に、民間企業を巡る会計も国際会計基準の発想を参照しつつあります。その中で、修繕引当金については、「操業停止や対象設備の廃棄をした場合には不要となることから、負債に該当しない」ため、将来的には引当金計上が認められなくなる可能性もある、と解説されています。

http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/commentary/reserve/2010-03-04.html
 
 
 ただ、今のところは、純粋に4要件(将来の費用、当期以前の事象に起因、発生可能性が高い、金額の合理的見積もり可能)を満たせば、引当金を計上すべきということになるでしょうし、それは公会計でも変わらないと考えます。

 公会計、というより地方公共団体の行政サービス提供において必要となる修繕は、将来の費用で、これまで設備を使用してきたことが原因ですから、前二つの要件は問題ないでしょう。問題となるのは、発生可能性が高いかどうかと、金額を合理的に見積もることができるかどうか、でしょうか。
 
 
 もう1つ、民間企業と異なる点は、引当金を計上した結果、現役世代と将来世代の負担をどう考えるか、ということかと。

 引当金計上で行政コストが増える分は、一義的には現役世代の負担ということになりますが、仮に公債発行するのであれば将来世代にも負担させることができます。

 会計の理論、世代間負担、実際の資金繰り。そのあたりをどう考えて折り合いをつけるかは、今後さらに詰めていく必要があるのでしょうが、少なくとも引当金計上に関しては、様式に科目がないことを特段意識する必要はないと思われます。




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