2016.09.04
公会計の特殊性
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
とある自治体で、簿記の集中講義(全6回)の講師をさせていただきました(まだ終わっていませんが)。
基本的には「簿記」の研修であって、「公会計」の研修ではありません。ただ、もちろん、職員の皆さんが携わることになるのは「公会計」の世界。最後は公会計の話で終わったのですが、6回話してみてあらためて感じたのは、こと「簿記」という会計技術の話に関しては、企業会計も公会計も大きな差はない、ということ。
6回のうち、簿記の説明に費やしたのが4.5回、公会計の説明に費やしたのが1.5回。そんな印象です。
もっとも企業会計と公会計では、そもそもの主体(企業、自治体)の存在意義が大きく違います。
企業には、株主から資金調達して、事業活動によって利益を出し、それを株主に還元する、という大きなサイクルがある。
一方の自治体は、住民から対価性のない税を徴収し、住民の生活基盤を整備するとともに、弱者救済の所得配分を実施する。
利益という大きな指標を持つ企業に対し、数字で定められる指標を持たない自治体。
その違いが、損益計算書ではなく行政コスト計算書であることや、純資産変動計算書が重要であることなど、自治体特有の会計様式として表れます。また、財務書類の活用方法を考える上でも、やはり企業会計と公会計では発想の違いが生じてくることと思われます。
最後の第6回では、指標を含め、今後の公会計の活用方法には、まだ定まった形があるわけではありません、という話もさせてもらいました。
研修を受講された皆さん1人ひとりが、何かを感じ、どこかに引っ掛かりを持ってくれていれば、こんなに嬉しいことはありません。