2016.07.24

技術と発想の組み合わせ(2)

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 単式簿記か、複式簿記か。
 現金主義か、発生主義か。

 こうした分類に関係して、

 複式簿記という技術は不可欠なのか?
 単式簿記で、コストやストックの把握は不可能なのか?

という問題提起が前回でした。

 たとえばストック(残高)の把握に関して、結論を言えば複式簿記は不可欠というわけではありません。現金の動きに着目して取引を記録する単式簿記でも、たとえば期末時点のストックを把握することは可能です。
 
 
 少し頭の体操です。

 昨日、財布に10,000円ありました。
 今日、1,000円使いました。
 さて、今財布にはいくらあるでしょうか。
 
 
 
 
 
 ある研修で3人に訊いたところ、皆さん、10,000円-1,000円=9,000円、と答えてくださいました。間違いなく、素晴らしいことです。

 一方、我が家の小学生に訊くと、おそらく違う答えをすると思います。どんな答えか。おそらくですが、「今、財布の中身を数える」と言うのではないでしょうか。だって、「今財布にいくらあるか」と訊かれているんだから、数えたらいいやん、と。

 上に書いた式で9,000円を導き出す方法を、誘導法と言います。一方、財布の現物を数える方法を、棚卸法と言います。

 そうです。たとえ単式簿記で記帳していても、現物を数えるという方法でストックを把握することはできるのです。
 
 
 では、もう少し進めて、財布を数えた結果8,000円しかなかったらどうでしょう。本来、1,000円しか使っていないはずなのに、数えたら8,000円。でも、その事態を「おかしいな」と感じられるのは、「1,000円使ったこと」を記録しているから。記録していなければ、8,000円の残高に疑問の抱きようがありません。

 期中の取引をすべて記録する。そして、理論的には9,000円あるはずだということを把握できるようにしておく。この対象を現金のみならずすべての資産・負債に広げるのが、複式簿記という手法です。つまり、複式簿記はストックを把握するために必要なのではなく、正確なストックを把握するために必要だ、ということです。
 
 
 というような話から複式簿記と発生主義になじんでいただくべく、とある地方公共団体で夏の簿記研修講師を務めています。





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