2023.06.24
高校授業料の無償化
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
先日、とある顧問先で、コロナ禍が明けた後の勤務体制についての話題になりました。その会社は在宅勤務継続中。中でも、在宅従業員の方の一人が一時的に住民票を京都から大阪に移したのだとか。
理由を聞くに、高校生のお子様の授業料無償化恩恵を受けるためだそうです。は?と驚いてしまった。住民票を移すというのは、単に書類の話ではなく、今まで京都に住んで生活していた拠点を、物理的に大阪に移すということ。いくら高校授業料無償化とはいえ、生活拠点を変えることとのアンバランスさに強い違和感を覚えました。
もちろん、大阪の私立高校に通うということでしょう。公立高校なら、大阪に住むコストのほうが高くつくはず。「現在の制度では、私立高校の年間授業料が60万円未満の場合、世帯年収に応じて一定額を各家庭が負担し、残りを国と大阪府が負担しています。60万円を超える分については、年収800万円未満の世帯については学校側が負担。世帯年収が800万円を超える場合は、各家庭の負担となっています」(21日、FNNプライムオンライン)。
更に問題となっているのが、来年度以降、大阪府が段階的に「完全無償化」を目指していること。「新たな制度では所得制限を撤廃。60万円未満の授業料については、すべて国と大阪府が負担し、60万円を超える授業料については、全額学校側が負担することになるのです」(同)。
つまり、所得に関係なく各家庭の負担がなくなり、その分、私立学校側の負担が増加してしまう。で、私立学校側も、私立学校に子どもを通わせる保護者も、強く反発しています。「大阪私立中学校高等学校保護者会連合会は6月23日に公表した意見書で、……少人数学級などを念頭に「今まで通りの教育を受けることができなくなり、子どもが犠牲になる」と強調した。全面無償化の制度案を巡っては、府内の私立高などで構成する団体も5月に「学校経営に危機をもたらし、生徒の学習環境が一層劣悪になる」などと反対する声明を出している」(24日、日経)。
周辺府県も反対。大阪府民で他府県に通う高校生はどうなるか。他府県民で大阪府に通う高校生はどうなるか。今どき、単身赴任すら縮小していく時代でしょう。一時的に住民票を移して引っ越しまでさせてしまう制度には、無理があるのだと思います。
選挙に勝てばすべてという人たちが掲げた政策が、軌道修正される可能性は低いでしょう。選んでしまったのは大阪府民ですが、とはいえ、選挙がすべてではありません。何も全権委任したわけではないはず。タダより高い物はない、という結果にならないことを祈ります。