2023.06.18

『教室を生きのびる政治学』

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 岡田憲治さんの『教室を生きのびる政治学』(晶文社)を読みました。最初に岡田さんを知ったのは、ラジオだったか、はたまた、とある文章教室だったか。コラムニストの小田嶋隆さんが主宰するライティング講座にゲストとして登場されました。体が大きな人で、語る話も熱い。熱いけれど、大上段に語るのではなく、常に生活目線を忘れない語りが印象に残っています。

 その後、著書を追いかけて、直近では『政治学者、PTA会長になる』(朝日新聞出版社)も読みました。タイトルからも想像できる通り、ごくごく普通にある庶民の生活に根づいた活動です。そういう場で、大上段に「政治」と語っても、人々の心はついてこない。本書の根底にある姿勢も同じでした。

「教室」ですから、主に対象として想定されている読者は、中学生や高校生です。「そんなふうに不安や疑念、イラ立ちを抱えながら生きている人たちにとって、必要なのは「国民主権」とか「責任ある市民」だとか、そんなたいそうなお題目ではない。大事なのは自分の身の安全や安心、つまり半径五メートルにおける安全保障の問題だろう」(『教室を生きのびる政治学』、P.7)。

 安全保障、も政治と生活をつなぐ意味で使われています。「この本では、政治学の視点から、学校の教室で起こるアレコレについて考えていく。それはなぜか? 卒業して進学したり就職したりするまで、なんとか教室を生きのびて、学校生活をサバイブしてほしいからだ」(P.7)。

 高校生を抱える親として読みました。身につまされるものがある。その前に読んだフェミニズム小説『82年生まれ、キム・ジヨン』を男性が読んだほうがいいと思うのと同様、『教室を生きのびる政治学』は親が、大人が読んだほうがいい1冊です。

 ちなみに300ページの本で、読むのが早くもない私でもあっという間に読めました。岡田さんが、どんな前提で本書を書いたのか、その一端を紹介しておきましょう。

「まずは大事な断り書きをしておかなければならない。その役割を担うこの章は、結構重要なのだ。最初に、ドドーンとそれらをぶちかましておこう。何よりも一番大事なのは、次のことだ。これはこの本の背骨になることだ。「立派な人間になる」という目標は必要ないから、そんなもん捨てること。ここは太字で印刷されているが、なおその上に蛍光ペンを引いてほしい」(P.25-26)。

 なるほど、ともっとも腑に落ちたのは、論破したがる人は臆病なのだという視点です。「論破力とは、言い方や雰囲気を通じて相手を嫌な気持ちにさせて、自分が変わろうとする勇気を封じ込めてしまうとても臆病なやりとりを、格好よく言い換えたものにすぎない」(P.116)。

 高校生と接する難しさは変わりませんが、大人と接する難しさは一段下がったような気がします。


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