2023.06.11

私有地である公共空間

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 東大阪の顧問先近くに花園ラグビー場があり、南青山の顧問先近くに秩父宮ラグビー場があります。前者は近くにあるとは知っていましたが、未だに行ったことはありません。後者は存在すらまったく知らなかったので、数か月前、顧問先を訪ねた帰りに散歩がてら歩いてみました。

 一帯は神宮外苑で、ラグビー場だけでなく、神宮球場や国立競技場もあり、スポーツの聖地と言ってもいいのでしょう。「不思議な場所である。東京の明治神宮外苑は神社の一部なのに、まるで神社らしくない。シンボルは明治天皇の事績をしのぶ聖徳記念絵画館と4列のイチョウ並木。そう、ここは維新革命のメモリアルパークなのだ」(11日、日経)。

 そう、1923年に植樹された100歳のイチョウ並木を見に行ったようなものでした。それはそれは見事で、スマホのカメラでは収まりきらない。しっかり記憶に留めておこうと思います。

 今、その神宮外苑は再開発工事中。野球場とラグビー場を入れ替えて新築し、高層ビルも建つのだとか。イチョウ並木はそのままのようですが、そこまで激しい再開発が必要なのかどうか。「ホテル併設の野球場棟は高さ60メートル。イチョウの木々との間隔はわずか8メートル。傍らに高層ビル3棟が建つ。……周辺の風趣が損なわれる恐れは小さくないだろう。歴史的空間の変容と、樹木伐採や高層ビル出現による環境変化は避けがたい」(同)。

 ただでさえ狭い東京の空がまたなくなるかと思うと、いたたまれない気持ちになります。ただ、外苑は「私」と「公」の真ん中のような存在。「外苑は明治神宮の私有地である。地権者は明治神宮だ。同時に、それを超えた公共空間でもある。そんな場所の再開発はどうあるべきか」(同)。

 難しい。再開発推進と反対の意見は平行線で、その間にも工事は着々と進みます。そういうときは、一度立ち止まることでしょう。「「本来なら、国や都が保全基金をつくるなど前面に出なければならない……」。造園学の権威で、明治神宮総代のひとりでもある進士五十八・前福井県立大学長は言う。「まだまだ時間はある。いまからでも情報公開を徹底し、市民と対話を進めるべきです」」(同)。

 同意ですが、やりませんね、きっと。あれだけ問題が噴出しているマイナンバーカードだって、見直すとかやめるという話にならない。メディアも不思議なことに、「ここまで来たら後戻りできない」なんて平然と言い、進めることを前提にした話にしかならない。

 壊すことが改革という勘違い。今のままでいいという主張に既得権やら停滞やらというレッテルを貼る風潮。街角で「改革」を叫んでいる人を信じませんが、ものを考えない人たちの叫びを常に警戒していたいと考えています。


CONTACTお問い合わせ

PAGE TOP