2023.03.04

受験生の親

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 今から40年近く前。小学校高学年から高校までを大阪の南部で過ごしました。小学校6年生のクラスで中学校を受験した子どもは、確か2人くらい。「え、中学校受験すんの? すいごいなあ」。そんな会話があったと記憶しています。地域差もあるでしょうが、当時、中学校受験熱が高いとは言えない時代でした。

 今はどうなのでしょう。教育ジャーナリストは「過熱」と表現しています。「中学受験の過熱は新型コロナウイルス禍を経てさらに強まっている。一斉休校で公立校への不信感が募り、「公立離れ」によって私立中学受験の裾野が広がったと感じる。トップ層の大学への足がかりとしての受験とはニュアンスが変わり、「負け組」にならないための中学受験も過熱しているようにみえる」(1月24日、日経、おおたとしまささん)。

 人数が増えているという意味では、過熱は間違いないのでしょう。ただ、仮に中学受験に失敗しても、それが幸か不幸かは別にして、最低限、行く場所はあります。また高校生が大学受験に失敗しても、浪人生活をすることになる。実際、私も1年間の浪人生活を送りました。

 もっとも厄介なのが、公立中学校から高校への受験かもしれません。浪人という選択肢はあり得ない。多感な15歳から16歳という時期ですから、可能性を広げる必要があるでしょう。とにかく、どこかの高校には行かなければならない。かといって義務教育ではないので、公立中学校のような最後の砦もない。この高校受験の負荷を避けることが、中学受験の大きな目的になっているような気もします。

 子どもが受験生になって初めて気づくことがたくさんありました。当たり前ですが、親が代わりに受験することはできません。そもそも受験しても合格しない。近くにいて、様子をうかがい、見守り、祈るしかない。ようやく、自分が受験生のときにいかに親に心配をかけていたかが理解できるようになりました。

「日本の受験システムはペーパーテストのインプット、アウトプットのうまさが物を言う。このため、大量の課題をこなす処理速度と忍耐力、そして「与えられた課題に疑いを持たない能力」という3つの“素質”のある子どもが有利になる」(同)。

 そうかもしれません。ただ、最後の「与えられた課題に疑いを持たない能力」は、受験以前の家庭環境も大きいと思います。日頃、どんな会話をしているか。親と子どもの会話だけでなく、親同士がどんな会話をしているか。子どもはよく見ているものでしょう。

「親の役割はこの受験システムに子どもを過剰適応させないことだ」(同)。これは同感で、少し冷めた目で見つめていました。ただ、それが良かったのかどうか。その結論が見えない点も悩ましいところです。

 疑う。疑問を持つ。相手が誰であっても、誰の発言であっても、権威と言われる人の言っていることでも。まず問わるのは、受験などで損なわれることのない親の姿勢です。


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