2023.01.22
非暴力という闘争
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
毎週、録画予約してる番組が2つあります。
1つは、NHK-BSの『ワイルドライフ』。週に1度、アイロンがけをしながら、人間とは別の世界の、でも、地球上の世界に触れることができる入口のように見ています。人間の思考で語ってしまうナレーションに興ざめすることも多々あり。それでも、「どうやって撮影したのだろう」「彼ら(動物です)には世界はどう見えているのだろう」という疑問は尽きません。
もう1つが、NHK Eテレの『100分de名著』。歴史的名著を取り上げ、その1冊を25分×4回に分けて、指南役の方と読み解いていく番組です。司会がNHKアナウンサーの安部みちこさんと、タレントの伊集院光さん。伊集院さんのコメントが指南役の方を唸らせることもしばしばで、伊集院さん自身が『名著の話』という本を刊行されたくらいです。
今月取り上げられている名著が『独裁体制から民主主義へ』(ジーン・シャープ著)。そうなのか、ついに、シャープさんが取り上げられるのか。感慨深く思ったのは、昨年、同氏の『市民力による防衛』(法政大学出版)という本を読んだから。副題に「軍事力に頼らない社会へ」とあり、「非暴力による闘争」を実践するためにどうすればよいのかを説いた1冊でした。
非暴力による「抵抗」ではなく、まして、暴力の前に屈するのでも諦めるのでもない。非暴力という「武器」を使って「闘争」するのだ、という主張です。不可能ではない。実践した過去の事例もある。
「第一章で触れた四つの事例で、人々は実際には、無力で非武装であったわけではない。彼らは事実武装していたのであるが、それは心理的・社会的・経済的・政治的武器という全く別の武器で、であった。こういった武器で彼らは、簒奪者や侵略者の権力の、まさにその〈源泉〉を攻撃することができたのである」(同書、P.39)。
ロシアがウクライナに侵攻するとしても、プーチン大統領1人では何もできない。その命に従う人たち(軍、警察、官僚、メディア、国民)がいるからこそ、侵略者の権力が機能します。
そういった侵略者に、徹底して従わないこと。そして、決して暴力を使わないこと。それがシャープ氏が主張する「非暴力による闘争」です。「暴力行為は、非暴力的技法の最も重要な構成要素に、逆効果を及ぼしてしまうからである。……暴力行為は、敵側陣営(特に警察と軍隊)に対して、非暴力性という運動の威力を減殺させ、かつ第三者からの同情および支援の程度を減少させるであろう」(同書、P.70)。
本は違いますが、今月、『100de名著』で取り上げられる主張も同様のはず。ただ、1年前に読んだ『市民力による…」に対して抱いた疑問は、「暴力に対する脅威にどう立ち向かうのか」「非暴力を貫く間に起きる不条理は克服できるのか」という点でした。その回答は、本の中にはなかったように思います。
いや、忘れているだけかもしれません。番組の中でも紹介されるでしょうか。あと2回、録画を見る時間を楽しみに(楽しめないくらいに重い内容ですが)しています。
ちなみに侵略者は国とは限りません。権力を持って、暴力という仕組みを使って、個人の内心の自由に土足で踏み込んでくる存在すべてと考えたほうがいいでしょう。