2022.12.17

2023年度税制改正大綱

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 来年1月、税制改正セミナーの講師を務めます。首を長くして待っていた与党の税制改正大綱が、昨日(12月16日)、昨年より6日遅れで公表されました。

 事前報道の通り、生前贈与の課税強化、相続時精算課税の利便性向上、NISAを拡充しての投資拡大、インボイス導入による小規模事業者への配慮、電子取引データ保存の骨抜き、などなど。実務に影響しそうな項目は、昨年よりかなり増えています。

 ただ、ざっと一読した限り、ページ数こそ昨年の102頁から137頁に増加したものの、そこまで深い内容があるようには思えません。目玉がNISAの拡充、という新聞報道もありましたが、非課税分野の拡充では税理士業務にもあまり関係ない。明日、複数の税理士と議論する時間がありそうですので、徐々に、内容の理解を深めたいと思っています。

 それより、大綱の第1文に驚きました。「10年前、自由民主党・公明党は政権与党の座を取り戻した」。おいおい、どんな文学作品が始まるんだ。なんだか、ちょっと酔ってないか。

 そう思ったら、2文目でずっこけそうになりました。「爾来、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進めることにより、「もはやデフレではない」という状況を創り出した」。目が点・・・まさか、「もはや戦後ではない」を意識したのか? 百歩譲って、今、慢性デフレの日本でも急性インフレが進んできているとして、それはこの10年の成果でもなんでもありません。

 経済学者も語っています。「日本もインフレになったのだから、デフレはすでに過去の話になったのではないかという疑問をもつ方も少なくないかと思います。2022年に入ってからというもの、食料品などの値上げのニュースが目立つようになっていますし、たしかに日本の物価には大きな変化が起こっています。しかしそれでも私は、日本に住む私たちにとって、依然としてデフレこそが最大の問題であると考えています」(『世界インフレの謎』講談社現代新書、2022年10月20日刊、P.45、渡辺努さん)。

 相変わらず、車体課税に多くの頁が使われた税制改正大綱。将来的に電気自動車が普及すると、ガソリンに課される揮発油税などの税収が減ります。そこで大臣は何と言ったか。「…予兆は10月20日の参院予算委員会での財務相の鈴木俊一の発言だった。走行距離に応じて課税する「走行距離課税」について「一つの考え方ではある」と言及した」(16日、日経)。

 当然、業界は猛反発。最終的に大綱には、「電気自動車等の普及や市場の活性化等の観点から、原因者負担・受益者負担の原則を踏まえ、また、その負担分でモビリティ分野を支え、産業の成長と財政健全化の好循環の形成につなげるため、利用に応じた負担の適正化等に向けた具体的な制度の枠組みについて次のエコカー減税の期限到来時までに検討を進める」との記載が入りました。

 防衛力強化も含め、セミナーには関係の薄い部分で、ツッコミどころ満載の大綱になっています。いや、増税ですから数年後には影響してきますが、それも果たして実現するかどうか、かなり疑問です。


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