2022.11.26

決まったことでも反対する

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 2021年の東京五輪には誘致の頃から反対で、結局、テレビ中継は1分も見ることがありませんでした。

 一方で、先週始まったサッカーのワールドカップ(W杯)。こちらは、睡眠時間と重なるのが厳しいですが、起きている時間の試合はネットかテレビかでフォローしています。

 世界の巨大スポーツイベントを、一方は無視して、一方にはまり込むのはダブルスタンダードなのか。今朝も10km走りながら考えていて、いや、考え始める前から自分の中で答えは出ているのですが、まだ、それを言語化するには至っていません。感覚や直感を言語化するには、それなりの思考と時間が必要なのでしょう。

 五輪に反対していた(終わった今も反対中)理由は、あちこちに何度も書きました。嘘、汚職、選手軽視、コロナ無視、近隣の生活や環境破壊、メダルのみ重視、お祭り嫌い、などなど。海鮮嫌いな人が海鮮丼を食べさせられる場面と同じで、あまりにも嫌いなものが重なって、とにかくうんざりだったのです。今までの五輪も海鮮丼でしたが、その鮮度がいよいよ落ちてきたのではないでしょうか。

 コロナ禍のど真ん中で、あれだけ反対の声が多かったのに強行した。一度始まったものは止められないウチの国の体質は、戦後も一向に変っていない。始まった以上楽しまなければ、という論調も嫌いです。いつまで経っても、ダメなものはダメ。そう言い続けなければなりません。

 そう言い続けた結果なのか、消費税のインボイス制度も、電子帳簿保存法の電子取引のデータ保存も、今回の2023年度税制改正で骨抜きになりそうです。「政府・与党は消費税の税率や税額を請求書に正確に記載・保存する「インボイス制度」で、フリーランスなど小規模事業者の新たな負担軽減策を設ける調整に入った。納税を免除されてきた事業者が課税事業者にかわる際、納税額を売上時に受け取る消費税の2割に抑える。2023年10月から3年間の措置で円滑な制度導入をめざす」(21日、日経)。

 既に円滑ではありません。経過措置に経過措置が加わって、どんな制度になるのか。上の記述を素直に読めば、やはり課税事業者にはなってね、でも納税額は80%簡易課税での金額を上限にしてあげるよ、ということ。インボイスをいったん白紙撤回すればいいものを、そんなことできるはずがないことは歴史が示す通りです。

 一方、電子取引のデータ保存。もう1年も前から「大変だ」「実務で対応できるはずがない」「請求書は紙でもらうことにする」など、大騒ぎになっていましたが、既に対策している会社もあるであろう今になって、骨抜きです。「政府・与党は2024年1月から企業に本格的に求める請求書の厳格なデータ管理保存を特例で緩和する。……経理のデジタル化が遅れる企業を対象に請求書のデータを簡易保存することを条件に紙での保存も事実上、容認する」(25日、日経)。

 インボイスで何がしたいのか。こちらは財務省の戦略がしたたかと感じますが、電子取引のデータ保存で何をしたいのかという背骨は存在しません。きっと、中小企業の実務現場を理解していない上位者が、DXという流行に乗ったがために、引き返せなくなってしまったのだと想像します。白紙撤回には至りませんが、今後、少なくとも中小企業の現場で話題に上ることはないでしょう。

 思想のない政策は右往左往して、実務には定着しない。実務に負荷しかかけない制度であれば、決まったことでも粘り強く反対の声をあげ続けることで、方針転換の可能性がある。その一例として、よくよく記憶しておきたいと思います。


CONTACTお問い合わせ

PAGE TOP