2022.06.26

忘れてはいけないこと

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 先週、少し紹介したコラムニストの小田嶋隆さんが、24日、病気のため65歳の生涯を閉じました。呆然……。たくさんの文章を読み、対談番組を聞き、文章教室にも通いました。数年前に病に倒れ、その後も入退院を繰り返し、覚悟はしていたものの、強い影響を受けてきた方が鬼籍に入ってしまう寂しさを突きつけられています。

 昨年行なわれた東京五輪について、小田嶋さんは招致の段階から反対を表明されていました。他の方と数人で、『街場の五輪論』という本も出版。私がよく覚えているのは、何かの対談で小田嶋さんが、「五輪を先進国でやるなんてまるで時代遅れ。毎回、近代五輪発祥のギリシャでやればいいんですよ」とおっしゃったこと。まったくその通りだと思いますし、結果的に招致から後始末まで、縷々沸き起こった問題は、いつもの通りうやむやになりそうです。

「東京五輪・パラリンピック組織委員会は21日、新型コロナウイルスによる史上初の1年延期で昨夏に開催された大会の経費を総額1兆4238億円とする最終決算を発表した。組織委は30日に解散する予定。経費に関する契約書などの文書は清算人が10年間保管するが、開示の義務がない。開催自治体の東京都でさえ「閲覧は困難」との見方だ」(22日、東京新聞)。

「やると決めたら最後までやる」精神も、何とかならないのだろうか。明確な責任者がいたり、結果を冷静に検証したり、今後の世代の指針にしたり、そういう発想や行動のないところで最後までやる精神を振りかざされると、資金と資源の壮大な無駄遣いが発生します。

「大会組織委員会は最終的な経費が1兆4238億円、公費負担は7834億円だったと発表した。いずれも当初想定のほぼ倍だ」(24日、日経)。ところが、2016年末以降に発表した金額を基準にして、こんなタイトルで総括する記事もある。「東京五輪大会経費は1兆4238億円 「大会の簡素化」で経費削減」(21日、日刊スポーツ)。へ? 経費削減?? いや、記事を読めば当初想定金額も書かれていますが、このいそがしい時代、誰も本文なんて読みません。

 どうして、こんなに忘れてしまうんだろう。いつから、時間が経てばうやむやにできる、という姿勢がデフォルトになったのだろうか。なぜ、4600万円の顛末には必死なのに、兆単位のお金には無頓着なのだろう。いや、祭りの精神で一気に盛り上がる、という点では一緒なのだと思う。祭りの盛り上がりを否定はしませんが、その後始末は高くつくことも、そろそろ直視したほうがいいと思います。

 忘れること、忘れないこと、忘れちゃいけないこと。
 黙れること、黙れないこと、黙っちゃいけないこと。

 最後の「いけないこと」を、くどくど蒸し返すことの大切さを教えてくれたのが、小田嶋さんだったとも感じています。


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