2022.05.01
路線バスの楽しみ
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
久しぶりに何度も路線バスに乗りました。1泊2日で訪ねた金沢です。駅を拠点にして、右回りと左回り。13か所(?)のバス停の範囲内に、名所と言われる兼六園や金沢城公園、金沢21世紀美術館、茶屋街などが集まっています。
いや、面白かったのは、そのループバスではなく、普通の路線バスの運転手さんたち。金沢には赤い北鉄バスと、青いJRバスが走っていました。最初に乗ったのは北鉄バス。周遊きっぷなので乗る都度に払う料金はなかったのですが、いまどき珍しくICカードは使えません。車内にも、その注意書きがいたるところに記されていました。
次に乗ったJRバス。この運転手さん、走っている間中、一人語りをひたすら続け、乗客のクスクス笑いを誘っていました。「どうか皆さん、降りたらSNSでつぶやいてください。金沢のバスはICカードが使えないといううわさがありますが、あれは嘘ですよ。青いJRバスならICカードが使えますと」。嫌味にならないのは、「もっとも赤いバスでももうすぐ使えるようになります。今、準備をされています」と付言するところ。
兼六園の何が「兼六」なのか、その意味も紹介してくれました。覚えていないので、石川県の案内から引用しておくと、庭園で実現が難しい「六勝」すべてをを兼ねているのだと。「六勝とは、[宏大(こうだい)][幽邃(ゆうすい)][人力(じんりょく)][蒼古(そうこ)][水泉(すいせん)][眺望(ちょうぼう)]のこと」(石川県ホームページより)。
広々としていて、静かで、人の手で整備されつつ、どこか懐かしく、池が配置されていながら、遠くの景色が気になる。確かに、兼六園は6つを兼ね備えた庭園だったと思います。
路線バスで思い出すのは、奈良の八木から谷瀬の吊り橋や熊野本宮大社を経て、和歌山の新宮まで走る日本最長の路線バスに乗ったときのこと。もう25年くらい前の話ですが、そうとは知らずに予約をしたら、普通の路線バス。乗客は2組のみで、運転手さんの真後ろの席で会話をしながら、3時間以上のバス旅を楽しみました。何を話したかは忘れましたが、普通の路線バスなのに予約するお客さんなんて初めてだ、と言われたことを覚えています。当時は、まだ、「日本最長」と有名になる前だったのかもしれません。
最初の読書体験と言ってもいい紀行作家の宮脇俊三さん(1926-2003)。鉄道の旅がほとんどですが、路線バスに乗った『ローカルバスの終点へ』という本も出しています(1989年、日本交通公社)。実家の本棚に残っているはずですが、さすがに内容まで覚えていません。でも、きっと、宮脇さんのこと、運転手さんとのやりとりを、ボソッとしたユーモアを交えて綴っておられたのだと想像します。
運転手さんの個性が色濃く出る路線バスですが、鉄道に代替するといっても安泰ではないでしょう。過疎化、運転手不足、コロナ禍による経営難など、経営環境は楽ではないはず。せめて乗れる機会を見つけては、積極的に利用したいと思います。先週書いたような鉄道の末路を、路線バスがたどらないとも限りませんので。