2022.03.06

その土地ならでは

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 日本酒が好きです、と言うと、9割の確率で返ってくるのが、「でも、日本酒は次の日に残りますよね」という言葉です。科学的なことは分かりませんが、俗説でしょう。ビールだって、10杯も飲めば次の日に残ります。若い頃は大丈夫でも、馬齢を重ねると、次の日、使い物になりません。チェイサーの水が不可欠になりました。

 チェイサー明けの朝。新聞を開くと、フランスのワイン農家に生まれ、高級シャンパン「ドン・ペリニヨン」の最高醸造責任者を28年務めたリシャール・ジョフロワさんが紹介されていました。「日本酒の醸造会社、白岩(富山県立山町)の会長を務め、日本酒「IWA 5」に力を入れているジョフロワさんの自宅はフランス東部シャンパーニュ地方にある」(6日、日経)。

 フランスでワイン生産を学んだ後、米国のワイン農家でインターン。その後、高級シャンパン会社から技術指導でスペインやオーストラリアへ。ただ、周りの反応は芳しくなかったそうです。「土地の歴史、地元の人の味の好みを忘れ、自分の価値観を押しつけてワインを造ってしまったのだと気付く。「振り返れば、当時の私は傲慢だった」」(同)。

 ドン・ペリニヨンの次の人生は日本と決めていたのだとか。「どんな土地でできたかを大切にする日本酒の考え方を壊さないようにしつつ、飲みやすさを追求している」(同)。

 思い出したのは、10年以上前、高知県のある酒蔵を訪ねたときのこと。変わり者と評判らしい会長は、遠くから話を聞きに来た税理士に、「あんたも変わりもんやな」と言いながら3時間近く話を聞かせてくれ、工場も蔵も案内してくれました。

 米作りも始めたというその会長が、地酒についてこう語ったのです。「兵庫の米を使って、広島の杜氏が、高知で造る。そのどこが地酒や。そんなもん嘘やないかと。地元の米を使い、地元の人間が造り、その土地の匂いがするのが地酒じゃないか。土地の匂いがなくなり、みんな同じように造るから清酒は廃れていったんや」。

 四万十川ほとりの酒蔵で、40010時間、熟成させた栗焼酎は絶品です。先日、近所の酒屋さんで見つけました。もちろん、嬉しい。ただ、最近はスーパーに行けば、東京バナナも、もみじ饅頭も、赤福餅も、うなぎパイも、何でも買えてしまう時代です。家族曰く、カラ出張の言い訳に使えると。それはともかく、その土地に行って、その土地でしか飲めない、食べられないものをいただくありがたみが薄れてきているようにも感じます。

 幸い、四万十には足を運びました。繁忙期明け、会長の話と山のふもとにある蔵を思い出しながら、栗焼酎をゆっくり楽しみたいと思っています。


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