2022.02.20
失敗に対する感度
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
以前、大学時代にアルバイト(と言うほどでもなくお手伝い)をしていた喫茶店。時折、餃子入りの味噌汁など、とんでもないメニューが登場しました。アメリカンコーヒーというのは、コーヒー半分、お湯半分なのだと教えてくれたのも、今はなきこのお店です(たぶん「正統」ではない)。
その中で唯一、後で自分でもやってみたのが「ミルクご飯」でした。ある日、店に行くと、メニューの看板に「ミルクご飯」と書いてあった。何ですか、と聞くと、店のおばさんが何事もなかったかのように、水の代わりに牛乳で炊くのよ、と教えてくれました。米は水で浸して炊きますが、牛乳で浸して炊くのです。
食べてみましたが、意外にも牛乳臭さはありません。炊飯の過程で、乳成分が飛ぶのでしょうか。ただ、積極的においしいわけでもない。体にいいのかもしれませんが、普通に炊いた米を、おいしいと思いながら食べるほうが、体にも心にもいいと思い、自分で試したのは1度きりでした。
今、BGM代わりのNHKに、フランス人の3つ星シェフが登場しています。日本で店を持っているようですが、来日当初の失敗と、失敗こそが大事という話を語り始めました。当初の大失敗が「米」。米をココナッツミルクで炊いて、砂糖と胡椒を混ぜ、その上に黄色いマンゴーの身を乗せる。「黄色いマグロ」と名づけ、寿司の世界を新しく切り開きたかったのだと。
結果は、失敗。米と砂糖を混ぜるというのが、日本人には受け入れられなかったと語っています。見た目もいい、アイデアも斬新、自信の一作だったようですが、大きな挫折になったとシェフは語りました。フランス人だからか、どうしても米をミルクで炊いたり(!)、強いソースで味をつけたくなってしまう。ただ、やはりその土地ごとに文化があることを思い知らされた。米の「ニュートラル」さが難しく、今でも、ピラフを除けば、米のレシピはライス・パフという米を膨らませた菓子だけなのだとか。
いや、感心したのは、米の話ではなく、失敗に対する感性の豊かさです。日々、小さな失敗の繰り返しで、なぜ、どうして、と思うこともしばしば。20年近くお付き合いのある60歳を超えた経営者の方が、本屋さんで見つけた会計本を読んでいる、と話してくれたことがあります。20年ものお付き合いで、そんな話もできていなかったのか、と衝撃を受けました。
繰り返しですが、毎日が失敗の繰り返し。ただ、気づける失敗はまだ救いで、気づいていない失敗も多いはず。1つの失敗に気づいたとき、気づいていない失敗か、失敗予備軍が、10はあるのだと思う。ミルクご飯は仮に失敗だとしても、何か工夫をしてみるという発想を生むでしょう。失敗に対する感度を常に上げておきたいと思います。後悔するためではなく、後悔と反省は一瞬にして、前に進むために。