2022.01.23
第3の場所
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
朝、BGMのようにNHK-BSをつけています。10分、15分、30分という短い番組が続き、きっと、そのほとんどは再放送。ヨーロッパの街並み、街角に置かれたピアノ、世界の鉄道、日本の山々、タクシー運転手の町案内、100km以上走るトレイルラン、北海道の動物たち、などなど。その主張のない風景が、BGMにはもってこいなのです。
最近のお気に入りは、世界の居酒屋でしょうか。あるメキシコの居酒屋は、外に人が待つくらいの人気店。待っている間にも、既にビールを飲んでいます。食材の持ち込み禁止と書かれていますが、常に持ち込む常連客がいる。野菜を切って、ドレッシングをかけ、勝手にサラダをつくって食べていましたが、店主は「こんなもの料理のうちに入らない」と、まったくお構いなし。誠実に応じる、嘘をつかない、必要以上に金をとらない、が先代からの言い伝えなのだとか。
先日は、ポルトガルの居酒屋でした。店主が、映画『ワイルド・スピード』のホブスにしか見えません。豪快で、でも繊細で、面倒見がいい。「名前を呼んでくれたのはボスが初めてで、すり減るくらいに呼んでくれる」と語った従業員がいました。その店の特徴は、とにかく大盛り。だから、客も、大勢で来て取り分ける。大盛りにしてお腹いっぱい食べればみんな幸せだろう、という店主の考えが徹底されています。
そう言えば、ドイツの居酒屋だったか。かつて、ビル・クリントン元米大統領が訪ねたいと言った店があり、そのとき、店主はこう答えたのだとか。「来ればいい。そして席が空けば座ればいい」と。
もちろんお酒の力もありますが、とにかくどのお店でも、居酒屋の客が楽しそう。そして、店主には店を守り抜く哲学がある。BGMとして映像を流しているのは朝ですが、何だか、こちらまで飲んでいるような気持ちになってきます。それ以前に、主張がありすぎてつい見入ってしまうので、BGMには合いません。
居酒屋でわいわい、ができなくなって2年が経ちました。大丈夫かと思った矢先に、今度はオミクロン型の大流行。そういう状況だからこそなのか、職場でも、家庭でもない、居酒屋という第3の場所での賑わいを懐かしく眺めているのだと思います。
今回の型は感染力が強いようで、子どもの学校も学年単位で休校となりました。その期間、1週間以上。なるほど、今こそ、ギガスクール構想が生きるとき、と思いきや、配られたタブレット端末は学校に置かれたまま。なんだそれ、と拍子抜けです。非常時に向けて、平時に準備するのが常套手段だと思うのですが、非常時になってあたふたしているように見えてしまう。
もともと、大人数でわいわいすることが好きではありませんが、少人数でも集まることに抵抗を感じてしまう現状が残念です。世界まで行かなくても、日本にも居酒屋はたくさんある。何も気にせずに集まれる日を願いつつ、そのときまでお店があることを祈るしかありません。いや、本当に祈ることしかないのだろうか。