2022.01.16

人が動いたとき

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 会計士の世界では、粉飾決算。税理士の世界では、仮装・隠蔽。もちろん、あってはならないことですが、時として起きてしまう不正事件です。

 国の統計でも、不正問題がありました。「国土交通省の統計不正に関する第三者検証委員会は14日、幹部職員に「責任追及を回避したい意識があった」などと指摘する報告書をまとめた。不適切な手法を見直す提案に上司が取り合わなかったことも分かった」(15日、日経)。

 書き換えは、半ば公然に、かつ暗黙の了解で行なわれていたようです。「18年10月には担当係長が着任したばかりの幹部に集計で書き換えをしている事実を説明したが「触れてはならないことに触れたという雰囲気」となり、放置された」(同)。

 これは不正です――。そう指摘する人がいたことはせめてもの救いでしょうか。「19年には新たに担当となった課長補佐が幹部に書き換えをやめるべきだと訴えたが、幹部はこの問題を「公表はしない」と発言したという」(同)。

 前から続いてきたこと。それを変えるには、それなりの熱量が必要で、不正を正すとなるとなおさら。自分がやってきたことならともかく、他人がやってきたことに異を唱えるのですから、「あなた、間違っています」と言えるかどうか。そのときの拠り所となるのが、大義でしょう。

「経済活動でデータの重要性が増す中で基幹となるはずの政府統計の信頼が揺らげば、政策展開や企業の戦略にも影響が及ぶ。国交省だけでなく政府全体の問題として統計改革につなげられるかが問われている」(同)。

 1つ嘘をつけば、整合性を図るために、嘘をつき続けなければならない。だから嘘は割に合わないのですが、毎日文章を書き続けることは、嘘をつかないための予防線になっているような気がします。毎日、思ったことを素直に書いていれば、以前書いたことを気にする必要がありません。いや、ありませんは言い過ぎかもしれませんが、仮に思った通り書いていて、以前と書くことが変わっていれば、考えが変わったと素直に受け止めればいいだけです。

 おかしいものを、おかしいと言う。それは大事なのですが、組織の中でその指摘が受け入れられない事態が続くと、そもそも指摘する人もいなくなってしまうでしょう。「短期の人事異動が前提で「任期を『やりすごす』インセンティブ」があったとみる」(同)。何も、省庁に限った話ではありません。どの組織にも、多かれ少なかれ見られる傾向ではないでしょうか。

 不正を正すことに限らず、何かを変える機会は、人が動いたとき。惰性の仕事は、不正やミスの温床です。惰性で仕事をしていないか、常に自ら問い続ける必要があるでしょう。


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