2021.12.12

朝令暮改の評価

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 1000円札にも描かれていた野口英世。その後世の評価は違ったようで、11日の日本経済新聞『大機小機』が紹介しています。

「黄熱病についても病原体を特定し、ワクチンを作ったと主張したが、実際には当時の顕微鏡の精度ではウイルスを見つけられるはずもなかった。作ったワクチンも結果として効果がなかった。効かないワクチンを自らに打って西アフリカに出向き、黄熱病にかかって命を落とした」(11日、日経)。

 後年、野口自身も、自分の過ちを知っていたはず。という流れで、日本銀行総裁の黒田東彦氏の話に転じます。

「2013年の総裁就任と同時に、経済学者のポール・クルーグマン氏のインフレターゲット論を信じ、異次元緩和によって2年で2%のインフレと景気回復を達成してみせると豪語していた。だが、8年たった今も実現できないまま、日本は歴史上類例を見ない巨額の過剰流動性を抱えている。本人もとっくに失敗に気づいているであろう」(同)。

 まったくです。そして、失敗を認められない。アベノマスクは、未だに8000万枚の在庫があり、保管料をこれまで6億円も払っているそうです。これからも保管料はかかり続け、布マスクの使途は極めて限定的なはずですが、きっと捨てないのでしょう。捨てること=失敗を認めることですから。

 その点、新政権の判断と撤回には注目しています。オミクロン株の発生に伴い、海外からの帰国を制限し、航空便の新規予約を停止したこと。突然の発表に混乱し、新規予約停止は撤回されました。先日の衆議院選挙で落選した派閥トップを内閣官房参与に任命しましたが、まさかの雇用調整助成金を受給していて1週間で辞任したこと。そもそもの判断の妥当性が問われるのは当然として、方針や任命の失敗を認めて修正したスピードは、なかなか見事でした。

 もっとも、この速度が発揮されているのは、まだごく一部なのかもしれません。朝令暮改で試されるのは、何を重視するのかということ。「人は間違いを犯す。……効果が見えない上に失敗であった場合の巨大な被害を想定できるなら、直ちに修正すべきだ。一個人のメンツのために共倒れさせられる国民は、たまったものではない」(同)。

 まったく同感。前任者に対する忖度に付き合わされるのはうんざりです。まずは、簡単な、学術会議の6名を任命したらどうでしょう。そうしているうちに年が明け、また桜の季節がやってきます。


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