2021.06.27
魂を入れる
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
仏造って魂入れず、と言います。
「物事をほとんど仕上げながら、肝心な最後の仕上げが抜け落ちていることのたとえ」(小学館デジタル大辞泉)。
復興五輪とか、
女性活躍とか、
一億総活躍とか、
ふわふわした呼びかけを聞くたびに思い出す言い回しです。
いや、むしろ、ほとんど仕上がってもいない。
空き樽は音が高い。
そんな言い回しもあるようです。「内容のない軽薄な人にかぎって、おおげさな表現や言動が多いものであるというたとえ」(imidas)だと。
今月、日本経済新聞の『私の履歴書』は、
TOTO元社長の木瀬照雄さんです。
昨日、25回目の連載は、女性活躍がテーマでした。
「快適な生活空間をつくるリモデルの現場から聞こえてくるのは女性担当者の優れた感性。製品購入の決定権を握っているのが奥様という事実だ。トイレ、キッチン、浴室、洗面台など。どれも女性が使いやすいと思ってくれないと価値はない」(26日、日経)。
そんな背景があって、
会社としても女性活躍を前面に打ち出したのは、今から15年以上も前の話です。
「2004年に創造力豊かな自律した社員と熱気みなぎる会社づくりを主眼の「チャレンジ21計画」を掲げ、女性活躍に関する7人の委員会も立ち上げた。すると男性役員などが「本気ですか」と聞いてきた。「本気に決まっとる。男女を問わず能力を発揮できる職場にする」とキッパリ」(同)。
当時の雰囲気は。
いや、今も、こんな会社が多いはず。
「男性管理職は女性の扱いを分かっていなかった。人事部には「男をよこせ」の一辺倒。「どんな人材がほしいのか」と聞き直すと、「運動部出身の男です」と。あきれた」(同)。
心配りと、評価と。
「私自身、女性から話を聞き、衝撃を受けた。海外から視察のお客様がいらっしゃると、その国の旗を買い、食堂や会議室に飾り、自宅の庭から花を切って職場にいけることもあった。だが上司には「ぼくの評価にならない」「余計なことです」と全く理解されなかったという。「なぜ『正しいこと』をちゃんと評価しないのか」と怒りに震えた」(同)。
そんな状況を変えなければならない。
「05年4月、社長直轄の「きらめき推進室」を設置。女性、男性それぞれ3人のメンバーは「なぜTOTOは女性活躍に取り組むのか」「何のためにやるのか」「TOTOにとって多様性に取り組む必要はあるのか」と根本的なことから考え抜いてくれた」(同)。
木瀬さん、経営理念を策定するときにも、1人で数か月考えたそうです。
「何のためにTOTOが生まれたのか」
「TOTOは何のための会社か」
掛け声だけ、
スローガンだけで動くほど、
人の心は単純ではないでしょう。
そこに含まれる魂に触れたとき、
ようやく動く可能性が生まれるのだと思います。