2021.05.02
自由な思想
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
『石橋湛山の65日』(保阪正康さん、東洋経済新報社)を読みました。
首相としての在任は、わずか65日。
それでも、言論人として出発し、
戦争や軍備拡張にも反対の論陣を張っていた。
保阪さん曰く、
「石橋にとって首相のポストは、自らの人生の目的ではなく、自らの思想や理念を実現するための手段だったのである」(P.3-4)。
守るべきものを見失っている今だからこそ、
その姿勢に見習うべき点、多々ありと感じました。
昭和22年、
GHQから公職追放を受けた石橋湛山は、同年、
「自由思想協会」を立ち上げます。
引用したい箇所がたくさんありすぎて困るのですが、
山口正さんが『思想家としての石橋湛山』で記した分析の箇所を
示しておきましょう。
「自由思想家とは究極にはファシズムと対峙することになるのだが、そのためには三つの姿勢が必要だと説くのである。第一は、「一切の束縛から解脱し、事物を自由に考えること」、第二は、対立者の意見に聞くべきところがあれば、「善い点があればこれを受け容れ採用する寛大な精神をもつこと」、第三は、「総ての問題を現実の生活に即して思考すること」」(P.114)。
政治の話ではありません。
生き方の話だと思います。
手元の現金と借入金で不動産を購入し、
マンションを建築したほうがいいでしょうか。
かつて、相続税に関する相談を受けたとき、こう答えたことがあります。
私なら、そんな面倒なことはしません。
毎日、入居者にトラブルが起きないか、
そんなことを心配しながら生活するなんて御免です、と。
それが正解かどうかは分かりませんし、
今ならどう答えるか、相手の状況にもよるでしょうし、
そう聞いた相手の方がどうされたのかも、分かりません。
が、先の3つ目、
現実の生活に即して思考するというのは、
極めて重要な視点だと考えています。
最後にもう1か所、病に倒れ、
岸信介(!)によって代読されることになった石橋湛山の施政方針演説。
その最後の部分を引用しておきます。
「…この機会に、私は、国民各位、とりわけ、わが国の将来をになう青年諸君が、自主独立の精神に燃え、世界平和の旗手として新日本を建設せんとする決意を深められるよう、切望いたしたいのであります。自立の思想は、模倣と雷同によってはつちかわれず、実にみずからの探求においてのみ得られるものであります。このため、私は、今後、いろいろの機関を通じ、青年諸君はもとより、広く各層の国民各位と接触し、国民の声を聞き、同時に、私どもの考えているところも率直に申し上げ、国民とともにある明るい政治を築くようにしたいと念願しておる次第であります」(P.309)。