2020.07.12

水がなくなるということ

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 前々回に触れた
 吉村昭さんの『闇を裂く道』(文春文庫)を読みました。

 500ページですが、
 ページを繰る手が止まらず、
 先週末に一気読み。

 熱海から沼津の間に掘られた丹那トンネル。
 その上には丹那盆地がありました。

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P.41

 急に樹林がきれ、あたりがひらけた。峠にたどりついたらしい。
 坂道をのぼったかれは、足をとめた。眼下に思いがけぬ光景がひろがっていた。それは、いかにも盆地というにふさわしい地形で、三方が低い山にかこまれ、平坦な地に田畠のひろがりがみえる。光っているのは川で、池らしいものもある。草木は、まだ緑の色をみせていないが、点々と田畠の中に散る藁ぶき屋根の家々が、おだやかな田園らしいたたずまいをみせている。
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 とにかく、水にあふれる盆地だったと。

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P.43

 かれは、水の豊かなことに呆れた。流れがいたる所にあり、大きな水車がまわっている。村には、水の流れの音と匂いがみちていた。
 咽喉がかわいたので、一軒の農家に入り、水を飲ませてもらった。その水は、家の裏手を流れる小川から直接樋(とい)でひき入れたもので、丹那盆地に住む人たちが、小川の水を飲んでいることを知った。
 湧水地の近くには、ワサビも栽培されていた。ワサビ田に清流が絶え間なく走り、それが光りながら樹林の中に消えていた。かれは近づき、掌で水をすくって口にふくんだ。歯にしみ入るような冷たさで、かすかに樹皮の匂いがしていた。
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 この盆地から、
 水が消え、井戸は枯れ、水車は止まり、水田はひからび、ワサビ田はなくなった。

 そういう歴史を、
 静岡県は経験しています。

 いや、本を読むのは骨が折れますが、
 江川紹子さんの原稿は5分で読めるでしょう。

「「リニア開業延期」は静岡県が“ゴネた”せいか? 地方が犠牲の「地方創生」はあり得ない」
 https://biz-journal.jp/2020/07/post_166522.html


 難しい問題です。
 他県はもちろん、
 静岡県内でも、意見が割れているという報道もありました。

 解決策を見つけるため、というより、
 難しい問題は難しいのだ、と発見するだけでも、
 意義のあることなのだと思います。


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