2020.01.26
住民票と住民税
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
昨年、
女子ゴルフ界で一世を風靡した渋野日向子選手。
年末年始も引っ張りだこだったようですが、
この時期、地元の岡山東税務署で一日署長を務めたそうです。
昨年は、獲得賞金だけで2億円超え。
「19年に続き2度目という確定申告を控えるが、納税額については「予想もできない」とし、「一人じゃできないので税理士さんと一緒に頑張ってます」と笑みを振りまいた」(25日、デイリー)。
でも、渋野選手って、岡山に住んでいるのでしょうか。
「高額納税者となった現在も岡山市に住民票を残し、地元に納税する。「岡山のためにたくさん使っていただけたらありがたい」と“岡山愛”を隠さない」(同)。
これは誤解でしょう。
公共サービスの対価という性質もある住民税の場合、
住民票(住民基本台帳登録)を基本としながら、
あくまで生活の本拠が基準のはず。
たとえば、大阪府四条畷市のホームページには、
次のようなQ&Aが掲載されています。
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Q 住民票はA市にあるのですが、実際は四條畷市に居住している場合でも住民税はA市に納めるのですか。
A 個人住民税を納める必要がある人で納める市町村は、1月1日現在に住所を有する市町村とされています。
住所とは、一般的には住民登録地(住民基本台帳登録市)で課税されますが、生活の中心とされる住所地が住民登録地と異なる場合は、その旨を申告していただくことによって、申告書に記入された1月1日現在の住所地で課税されることになります。
住民基本台帳に記録されていない市町村で課税されることになった場合は、住民登録地の市町村にその旨を通知しますので、二重に課税されることはありません。
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地方税法の規定も、
原則を住民票としつつ(第2項)、
実際の住所地の規定も置いています(第3項)。
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地方税法第294条 (市町村民税の納税義務者等)
2 前項第1号の市町村内に住所を有する個人とは、住民基本台帳法の適用を受ける者については、当該市町村の住民基本台帳に記録されている者をいう。
3 市町村は、当該市町村の住民基本台帳に記録されていない個人が当該市町村内に住所を有する者である場合には、その者を当該住民基本台帳に記録されている者とみなして、その者に市町村民税を課することができる。この場合において、市町村長は、その者が他の市町村の住民基本台帳に記録されていることを知つたときは、その旨を当該他の市町村の長に通知しなければならない。
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ただ、3項は「できる」規定となっています。
あくまで本人の申告に基づいて、
住所地の自治体は住民票登録がなくても課税できるのだと。
四條畷市のAは、そのことを忠実に表現しているということでしょう。
岡山愛、と言えば聞こえがいいですが、
本来あるべき姿は、少し疑問を感じるところです。