2020.01.05

東吉野村の図書館

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 今年最初の読書は、
 青木真兵さん、海青子さんご夫妻の『彼岸の図書館』(夕書房)です。

 埼玉県浦和市出身で、
 奈良県東吉野村(人口1700人)に移住して図書館を開設した青木真兵さん。

 そこでやろうとしていることは、何なのか。
 ご自身で、あるいは、人との対談で語ったことが書籍化されました。

 冒頭、思想家で武道家の内田樹先生との対談が掲載されています。

 今日は、少し長いですが、
 私の今年のテーマでもあるように感じますので、
 都市と地方の生活の違いについての箇所を引用してみましょう。

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内田 まわりの人の役に立てることは何だろう、余人を以ては代え難い自分ならではの能力って何だろう、ということを考えるのは、すごく大事なことだと思うよ。競争社会では「みんなができることを、みんなよりうまくできること」を競う。そうじゃないと格付けができないから。みんなが英語をやるから、自分も英語をやる。同じ技能を比較しないと、精密な格付けはできない。でもこれって、集団全体で見た場合には何の意味もないんだよね。全員が英語だけしかできなくて、そのスコアに数量的な差があるだけという集団と、全員が世界中のさまざまな言語にばらけている集団だったら、集団全体としての知的パフォーマンスは後者のほうが優れているに決まっている。けれど、集団内部での格付けはやりにくくなる。だから、格付けに基づいて資源配分する競争社会では、成員たちの能力がばらけることを原理的には許さない。全員に同じことをさせて競争させようとする。
 半農半Xという場合のXは集団内で「余人を以ては代え難いこと」であるべきだと思う。この集落では青木くん以外の誰もしないこと、誰もできないこと、それが君に求められている仕事だと思うよ。わずか一七〇〇人の集落なんだから同じような知識や技術を持っている人がぞろぞろいてもしょうがない。一七〇〇人全員が違う領域の専門家であったほうが、集落は文化的にはずっと豊かになるはずだからね。
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 そう、この「余人を以ては代え難いこと」が何か。
 これが、大きなテーマの1つです。

 この内田先生の言葉に答えて、青木さんは語りました。

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青木 そうですよね。都市部ではみんなが同じような能力を求められて、その格付けで低位につくと不要な存在とされてしまう。その余白のなさがすごく精神的に不健康で。地方はその意味では空白だらけなので、そこに自分なりの価値を自分で見つけて――それはそれで大変ですが――、周囲の人たちに何ができるのかを考えていく、一種の実験だと思っています。移住者って基本的には田舎に暮らしたことのない人なので。
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 青木さんの「ルチャ・リブロ」という私設図書館。
 いつか、機会をつくって、訪ねてみたいと思います。

 何せ、川を渡ってたどり着く、まさに「彼岸」なのだとか。
 想像しただけでも、楽しくなります。


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