2019.12.08
地方債のマイナス金利
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
「地方債、迫るマイナス金利 財政規律働きにくく」
11月24日、日本経済新聞の見出しです。
「地方自治体が発行する地方債にマイナス金利が迫っている。11月に発行条件を決めた神奈川県や大阪市などの公募5年物債は発行金利が0.001%となった。国債のマイナス利回りが定着し、国債に金利を上乗せする地方債の利回りもじわじわと低下している。金利負担がなくなるマイナス金利になれば、財政規律が一層働きにくくなる恐れもある」。
金利と利回りは違います。
そこを説明しているのが、次の文章。
「地方債は16年秋から冬にかけて利回りが急低下した。名古屋市など20自治体が発行した5年債は、表面金利が現在と同じ0.001%だったが、額面100円を上回る100円00銭2厘で発行できたため、実質的な利回りは約0.0006%となった」。
自治体のキャッシュフローを考えると。
+100円00銭2厘
▲0.001%の金利
▲100円の元本償還
最初に元本を超える金額で発行できている分、
表面金利>実質利回り、ということでしょう。
以上は、地方債を「発行」する場面の話ですが、
発行された地方債が「流通」する場面ではどうか。
「発行済みの債券を売買する流通市場では地方債の利回りはたびたびマイナスとなっている。償還まで残り2年の東京都債の流通利回りは、日銀がマイナス金利政策を導入した16年以来、マイナス圏になることが珍しくない。日本証券業協会によると、日銀の追加緩和観測が高まっていた8月にはマイナス0.0465%まで低下した」。
低コストで発行できるという意味では、自治体にとって望ましい。
ただ、その利回りで、債券を買ってくれる投資家がいるのか。
「マイナス金利でも投資家が債券を購入する最大の理由は、金利が一段と下がればその分債券価格が上昇し、転売益が見込めるから。満期まで保有を続ければ収益は見込めず、投機的な側面は否めない」。
投機的な地方債発行を勧めてくる投資家もいるはずです。
でも、当たり前ですが償還が必要ですから、
地方債の発行は将来の財源の先食い。
財政規律が働きにくい、というのはそういうこと。
低コストだからといって、
ばんばん地方債を発行する時代ではないでしょうが、
その危うさをはらんだ時代背景であるという認識は、
持っておく必要がありそうです。