2018.11.11
返礼品なし
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
ふるさと納税の返礼品競争の過熱。
そして、総務省による規制の強化。
ここ数年、繰り返されている状況です。
そんな中、6日の日本経済新聞に、
栃木県足利市の和泉聡市長が寄稿されました。
タイトルは、「ふるさと納税、返礼品競争加わらず」。
ほお、と思って読んだのは、
足利市には親戚が住んでいて、何度か訪れたことがある町だから。
「栃木県足利市は、寄付者には史跡足利学校の入場券などの簡素なお礼を送るだけにしている」。
私が関与している自治体も同じですが、
返礼品がないとふるさと納税の収支はマイナス。
つまり、流出超過です。
「制度による「収支」は、残念ながら2017年度で約7300万円の赤字になっている。「市の怠慢だ」とお叱りを受けることがあるが、どんなにお叱りを受けようと私たちは返礼品競争に加わらない。このままでは国の根幹が揺らぎかねない、という強い危機感があるからだ」。
危機感とは。
「ふるさと納税だけは、返礼品割合が5割なら、10万円納めると本来の使われ方をするのは5万円だけで、残り5万円は例えば牛肉となって納税者の胃袋に消えてしまう」。
昨日、ある勉強会で、利益には2つある、という話をしました。
生み出した利益と、横取りした利益と。
ふるさと納税(私はふるさとショッピングと読んでいますが)は、
まさに横取りした収入。
「豪華返礼品で多額のふるさと納税を集めている自治体は、本来その税が納められるはずの自治体から奪い取る結果になっている」。
地場産品の掘り起こしにつながっているのでは?、という意見もあるでしょう。
「ゆがんだ制度に頼った発信だとすれば、制度が終われば元の木阿弥だ。制度があってもなくても継続する地道な方法でやるのが、本来の発信であるはずだ」。
和泉市長のぶれない軸は、最後の言葉に表現されています。
「たとえ批判を受けても最後まで返礼品競争に加わらなかった、そんな先人がいたことを30年後、50年後の後輩たちが知る。そのことの方が、目先の損得に振り回されるよりも、まちづくりの力が継続すると信じている」。
やや頑なに過ぎるのでは、と思わなくはありません。
でも、流行に乗せられて競争に加わるよりは、よほど意思があると感じます。