2018.04.08
何が伝統か
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
何かと話題を振りまいてくれる大相撲。
大阪での春場所が終わり、現在巡業場所が全国を回っています。
4日、舞鶴市で行なわれた「大相撲舞鶴場所」では、土俵上で挨拶していた多々見(たたみ)良三市長が倒れるというアクシデントがありました。
近くにいた方が救護にあたりましたが、その中には女性の姿も。そこは「土俵は女人禁制」という伝統(?)を持つ大相撲です。「女性の方は降りてください」というアナウンスがあったのだとか。さらに女性が土俵から降りた後、関係者によって大量の塩が土俵にまかれた、とも。
当たり前ですが、こうした対応は多くの批判にさらされました。
そもそも、昔は女相撲も行なわれていた。
『日本書紀』にも、そんな記述が出てくる。
相撲は国技と言われますが、これも明治期に相撲専用の体育館を作るにあたって「国技館」と名付けられたことが始まり。伝統という言葉に惑わされてはいけません。
6日の巡業は兵庫県宝塚市。現在市長は女性の中川智子さんで、土俵「上」からの挨拶はかなわず、土俵「下」からの挨拶となりました。
「私は女性市長ですけども人間です。当たり前のことです」。
そう語った中川市長は続けます。
「実は開催市の男性市長さんは土俵の上に立って、あいさつします。私は土俵の外で、あいさつさせていただいています。でも皆さん、そして相撲協会の方に聞いていただきたい。女性であるという理由で、この宝塚市の市長でありながら、土俵の上であいさつできない、これは悔しいです。つらいです」。
そして、こんな問いかけを。
「私は考えてもらいたい。相撲協会は伝統を大事にし、国技である相撲をずっと守ってらっしゃいました。伝統は大事にすべきです。でも今、時代はどんどん変わり、女性の知事、市長も増えています。女性の総理大臣も現れるかもしれません。その時に女性は、絶対に土俵の上にのぼってはいけないのでしょうか」。
(以上、7日、毎日新聞より)
伝統という名のもとに思考停止していないか。
思考停止くらいならいいですが、何かの価値観を押し付けることになっていないか。
中川市長が言うように、時代は変わっています。その中で、急激な変化を避け、歴史や伝統が積み重ねてきた叡智を生かしながら、漸進的に進んでいく。それが「保守」の本質なのだと中島岳志さんは説きます。
伝統と言われたら、まずは「本当に伝統なのか?」と疑ってみる。そこから始める必要がありそうです。