2018.05.13
過去に学ぶ
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
『タクシー運転手』という映画を見てきました。
韓国映画を見たのは初めてですが、のんびりした日常風景、激しい民主化デモ、同士の絆、権力側とのカーアクション・・・終始ドキドキしながら、あっという間の2時間でした。
パンフレットによれば、映画の題材となっている光州事件は次のように説明されています。
「1980年5月18日から27日にかけて光州市を中心として起きた民衆の反政府蜂起。デモ参加者は約20万人にまで増え、全実権を握る軍が市民を暴徒とみなし銃弾を浴びせた」。
その光州に取材に向かった1人のドイツ人ジャーナリストと、ソウルからタクシーに乗せた平凡な運転手の、実話に基づく物語です。
そして、監督のチャン・フンさんは語っています。
「韓国現代史の大きな痛みである事件を扱うというプレッシャーがなかったとは言えない。“果たして私がこのようなスケールの大きな事柄を映画にできるだろうか”という怖さが先に立った」。
また、主役のタクシー運転手マンソプを演じた俳優のソン・ガンホさん。一度は出演のオファーを断ったそうです。
「80年の光州民主化運動は韓国現代史における最大の悲劇であるため、この映画の出演オファーをもらった時に大きなプレッシャーを感じたことは事実だ」。
でも、引き受けた。他の映画と違う点を、ソン・ガンホさんはこう語りました。
「マンソプがドイツ人記者を乗せて光州に向かったのも、職業倫理の側面よりは人としての道理、つまり最も常識的な道理に従ったまでのことだと思う」。
常識が壊れ、モラルが欠落し、正直や誠意や真摯といった言葉が空虚に通り過ぎていく。そんな日本の日常を目の当たりにしている心に、ずしんと響いてくる映画でした。
思い出したのは、平田オリザさんが語っていたこと。
「日本という国は、もはやアジア唯一の先進国ではないということ」(『下り坂をそろそろと下る』講談社現代新書)
過去から学ぶ姿勢。
他国から学ぶ姿勢。
そういった面で、いつの間にか日本は他国に大きく水をあけられているような気がしてなりません。