2018.02.18
都市から地方へ
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
昨日の朝から、『経済成長なき幸福国家論』(毎日新聞出版)という本を読み始めました。
劇作家・演出家の平田オリザさん。
日本総研の研究員で、地域を足で回り続けている藻谷浩介さん。
お2人の対談なのですが、最初からアクセル全開で飛ばしていて、すごいことになりそうな予感がしています。
たとえば平田さんは、大阪大学の特任教授でもあり、橋下徹さんの府政を見てこられました。
「スタイルは一貫して非常にわかりやすい。外に敵をつくってそれを叩く。最初は公務員や教員叩き、そのうちに文楽とかぜんぜん関係ないものまで叩き始めて、四方八方に鉄砲を打って自分のプレゼンスをあげていくという手法ですね。たまたまその時大阪にいたので、ああいうふうにファシズムというのは広がっていくんだと実感しました」(P.23)。
一方の藻谷さん。昨今の日本の状況に「怒っていますよ」と。
「誤解しないでほしいのですが、私を攻撃してくる人や、私と意見の違う人に怒っているのではありません。主観や衝動が先に立って、ものごとを客観的に眺められない人。何かの欲に駆られて道理の通らないことをやってしまう人。これどっちも同じことを言っているのですが、そういう人に腹が立つのです」(P.18-19)。
そういう人の中には経済人が含まれます。
「今の日本でいえば、「異次元の金融緩和」は後々金融秩序をガタガタにする危険が大きいとわかっていながら、目先の円安株高に喜んで口をつむぐ財界人に、政治家以上に腹が立ちます。政治家よりは経済の現実がわかっているのだから、目先の得に喜んでばかりいないで、少しは警鐘をならさないと」(P.20)。
平田さんについて、冒頭、司会進行の方がこう書いています。
「かつての演劇人は、地方から東京へ「上り列車」に乗って夢を叶えにやってきた。…(中略)…ところがオリザ氏の演劇活動は「下り列車」の先に舞台がある。九〇年代半ばから各地でワークショップを展開し、小中高校・大学生、障がい者、高齢者など「素人」も相手にし続けてきた。公演を前提としないケースがほとんどで、演劇より「コミュニケーション教育」標榜することの方が多い」(P.10)。
そんな本を読み始めた朝、日本経済新聞文化欄の写真を見て心の中で声をあげました。あ、平田オリザさんだ、と。記事のタイトルも、まさに「演劇人、東京を出る」。あまりのタイミングの一致に、こんなこともあるのか、と心底驚いた次第です。
平田さんは、2019年春、兵庫県豊岡市に移住するのだとか。
「兵庫県豊岡市では、県から委譲された国際会議場を「城崎国際アートセンター」という名の稽古場に変え、世界中から一流の劇団やアーティストを招聘している」(前著、P.11)。
平田さんは言います。
「東京は文化をただ消費する場所。演劇の創造拠点になり得ない」(日経)。
豊岡市・中貝宗治市長の基本的な考え方は何か。
「憧れだけで東京にはいかせない」(前著、P.11)。
「企業ではなく、アーティストを誘致したい。演劇や美術の力でブランドイメージを上げ、観光振興につなげたい」(日経)。
先日、東京出張に行きました。大阪もたいがいですが、とにかく人が多すぎます。「まっすぐ歩ける街で暮らしたい」と切実に感じました。
大阪や京都にいる必然性がなくなるときのことを、そろそろ考え始めたいと思います。