2017.12.24
三権分立の現状
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
11月19日のエントリーで、「三権分立」の話を書きました。
内田樹先生の見解を引いて、既に立法と行政は分立していないことが明らかだろうと。
そして、最後にこう書いています。
「そういえば、瀬木比呂志さんと清水潔さんの『裁判所の正体』(新潮社)が積読になっています。この本を読むことも、檻に幽閉されていることに気がつくための時間になるはず。せめて今年のうちに読んでしまいたいところです」。
その『裁判所の正体』を先ほど読み終えました。そして、得た結論は、「司法も独立しておらず、権力を向いている」ということ。
元裁判官で最高裁にも勤務。研究員としてアメリカ留学経験もあり、現在は法科大学院で教えている瀬木さんから、しきりに「統治と支配」という言葉が出てきました。
「近年の例から一つ挙げますと、たとえば夫婦別姓については、まさに「統治と支配」の根幹にふれ、自民党主流派の感覚にもふれますから、絶対さわらない(最高裁二〇一五年[平成二七年]一二月一六日判決)。だけど、非嫡出子の相続分については、そんなに大きな問題ではないので、民主的にみえる方向の判断を下す(最高裁二〇一三年[平成二五年]九月四日決定)。やや意地悪な見方かもしれませんが、日本の最高裁の判断を注意深くみていくと、大筋としてはそんな感じでバランスを取っている傾向が強いと思います。そして、国際標準の民主主義にかなう判決は、わずかなのです」(P.51)。
366ページある本は、瀬木さんとジャーナリストの清水さんの会話で進みます。とにかく読めば読むほど、「裁判所は分かってくれるはず」「お上の判断は間違えるはずがない」というのがいかに幻想かということが、詳らかになっていく。ヒラメ裁判、という言葉の意味も初めて理解しました。
毎朝、少しずつ読んでいたのですが、また1つ、日本という国の不思議さを痛感させられたように感じます。
そういえば瀬木さんは『不思議の国のアリス』に裁判の話が2つ出てくる、と紹介されました。
かつて『不思議の国のM&A』という本もありましたが(牧野洋さん、日本経済新聞出版社)、今回の本は『不思議の国の裁判所』と言ってもいいでしょう。
不思議の国の…でいろんな本が書けそうです。