2017.12.17

観光振興と税

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 10月31日の日本経済新聞に、宮城県気仙沼市の菅原茂市長が「観光振興へ宿泊税を起爆剤に」という文章を寄稿されました。

 東日本大震災からの復興の一環として「観光の戦略的方策」を策定し、水産に次ぐ基幹産業として観光振興を進めてきたという気仙沼市。

 スイスのツェルマットやアメリカのポートランドを視察。観光地経営には費用がかかるが、いずれの都市も宿泊税を活動原資にしていたそうです。

「ホテルの宿泊料が需要に応じて日々大幅に変動するこのご時世では、利用者にとって宿泊税の負担感も限定的ではないかと思われる。国税または国の管理の形で導入し、大都市に偏ることなく、各市町村の努力に応じて再配分し、観光財源を充実させてはどうか」。

 前半部分は首肯しかねますし、国から再配分する際にも利害調整が難しそう。そんな気がしますが、観光の充実に費用がかかるのは事実でしょう。
 
 
 こうした声もあってか、14日に公表された与党の税制改正大綱では、「国際観光旅客税(仮称)」が創設されることとなりました。ホテルへの宿泊税(東京都や大阪府は地方税として導入済)ではなく、飛行機や船舶で出国する際に、1人1000円の税金を課すこととなるようです。

「使い道としては、出入国手続きの自動化に加え、国内観光のプロモーションや地域の国立公園や文化財の整備などを想定している」(15日、日経)。

 なので、先の菅原市長の話にもあるように、観光振興を目的とした新税と言えるでしょう。ただ、分かりにくい。

 なぜに出国に?
 なぜに海外出張でも負担するのか?

「日本人には受益がわかりにくいとの批判の声がある。政府は訪日客増加に伴い航空機の海外便が増えれば、その分だけ日本人も様々な国に旅行しやすくなると主張する」(同)。

 本当に、こんな主張をしているのでしょうか。あまりにも意味不明な説明だと思います。せめて、国内観光資源が充実することで、都市で暮らす皆さんのふるさとの観光振興にも寄与します、くらいの説明はできないものでしょうか。

 それと、やはり名称と理屈です。どうしても海外出張による出国と、「国際観光旅客」が結びつかない。海外出張に行く人が払う税金で、出国手続きの自動化が進み、ますます海外に行きやすくなる?

 せめて入国なら、まだ理屈は理解しやすいのですが。。。



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