2017.10.29

自治体の使命

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 10月24日の日本経済新聞。

 地方自治総合研究所主任研究員の今井照さんが「行政は地域活性化に手を出すな」という意見を寄稿されていました。

「自治体の使命とはなんだろうか。最も限定的に定義すれば、さまざまなリスクに対して住民の安全と生命を守ることである。もう少し緩く考えれば、そこに住む人たちが今日と同じように明日を暮らせるようにすることだ」。

 まったく同感です。今日と明日が違う時代がありました。特に高度成長の頃、あるいはバブルの頃もそうだったかもしれません。私が好きな長渕剛さんも、故郷鹿児島を出た気持ちをこう歌っています。
 
  今日と昨日とが激しく違うことを知った今
  俺はKagoshimaを突んざく波に捨てた
 (@いつかの少年)
 
 でも、一定の物質的豊かさが実現した今、本来は「成長」から「成熟」へと舵を切らなければならないはず。ところが、いまだに経済成長神話にしがみつき、消費することで今日より明日が豊かになることを無謬の前提で語る言説をよく見ます。

 今日も昨日同様安定していて何も起こりませんでした――それではニュースにならないことは理解しますが、生活者としては、今井さんが言うように今日も明日も安心して同じように暮らせることが大事なのだと思います。
 
 
「だが現実に自治体は、地域活性化競争に放り込まれている」。

 今井さんの指摘は続きます。

「…縮小社会を迎える自治体は、地域活性化の幻想に振り回されずに「余計なことをしない」ことが肝要ではないか」。

 でも実際は。

「しかし、国からは「アイデアを出せ」「人口を増やせ」などさまざまなビーンボールが飛んでくる。計画づくりに職員が忙殺され、悲鳴を上げている自治体も多い」。

 そうした要望に応えて地域活性化策を実行すると、最初は補助金や優遇策があるにしても、次第に債務や維持管理コストが負担になってくる。そこで、今井さんの提案です。

「こうした悪循環を自治体がやり過ごすには、当面の間、国に対して「面従腹背」で対応するのも一つの方法だ。具体的には自治体財政に負荷がかからないように「やったふり」をすることである」。

 大胆な話ですが、その背景にはぶれない筋があるのです。

「国に対して「面従腹背」でも、今いる住民や地域に正面から向き合えばいい。それが縮小社会において市民生活や地域社会を守ることにつながる」。

 面従腹背。いろんな場面で使える方法だと思いますが、唯一、気をつける点があるとすれば、面従そのものが目的化してしまうことではないでしょうか。


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