2017.09.24
民間という言葉
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
8月に「民間企業という言葉」というタイトルで、短い文章を書きました(こちら)。ある自治体の方とたくさん話す機会があったので、その際に留意した点として。
22日、毎日新聞に「「民間」そんなに正しいか」という記事が掲載されていました(こちら)。
面白かったのは、国会論戦で「民間の発想」という言葉が使われた会議の回数を調べていること。
昭和期(~昭和61(1986)年):8件
平成期(平成4(1992)年以降):61件
「民間」「民間の発想」といった言葉が使われ出したのは、近年のことと言ってもいいでしょう。
では、なぜしきりに言われるようになったのか。思想家で武道家の内田樹先生が語っています。
「産業構造の変化の帰結でしょう。農家や自営業者が減り、日本人の過半は株式会社のような民間企業の従業員になった。生まれてからずっと企業やそれに準じた組織しか知らないから、あらゆる社会制度は、企業的なものだと考える。所属議員が勝手に取材に応じることを禁じた『都民ファーストの会』は象徴的です。議員は選挙民の負託を受けた政治家だと考えず、政党の一従業員だという感覚なのでしょう。従業員は自社の経営方針について、勝手に私見を述べることは許されませんから」
そして、「決められる政治」「スピード感」といった言葉にも警句を。
「治安や防災、教育、医療といったサービスは、専門家が専門的知見に基づき、市民に安定供給することが不可欠で、市場の論理に委ねてはならないんです。政治にも同じことが言える。企業の失敗は株主が損をするだけですが、政治の失敗は無限責任です。現に、先の戦争の敗戦責任を、我々は今も今後も負い続ける。だからこそ政治は、民間企業のような『スピード感』とは対極の、『熟議』『熟慮』をこそ重んじなければならないんです」
まったく同感です。地域や住民生活のために、息の長い行政サービスを提供するのが自治体の仕事。スピードある決断によってどんどん壊されては、たまったものではありません。