2017.05.14
もはや風前の灯火
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
突然ですが、日本国憲法第99条には、こうあります。
「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」
お隣の韓国で、新しく大統領に就任した文在寅(ムンジェイン)さん。その宣誓と演説が先日行なわれましたが、冒頭の宣誓は次のようなものでした(全文はこちらで読めます)。
「宣誓。私は憲法を順守し、国家を守り、祖国の平和的統一と国民の自由と、福利の増進および民族文化の育成に努力し、大統領としての職責を誠実に遂行することを、国民の前で厳粛に宣誓します。」
演説の中では、こうも語っています。
「今日から私は、国民皆さんの大統領になります。私を支持してくれなかった国民一人一人も、私の国民であり、私たちの国民として仕えます。」
もちろん、この言葉の裏付けを今後見守っていく必要はあるのでしょう。ただ、フランスのマクロン新大統領も同じようなことを言っていました。イギリス、アメリカの先例から、国民を二分するような取り組みは避けなければならないことを学んでいるのではないかと思います。
振り返って、日本はどうでしょう。首相自らが改憲議論を促す。これまでの議論の積み重ねとは違う9条改正案を示す。そのことを国会で問われれば「読売新聞を読んで」と答弁する。冒頭に掲げた憲法擁護義務も、社会の授業で学んだ三権分立も、もはや「風前の灯火」状態です。
先日、日本経済新聞に民進党枝野幸男さんのインタビューが掲載されました。その中で枝野さんは、「9条で世の中を二分するような話をしたら積み重ねが壊れてしまう」とおっしゃいましたが、説得力を感じます。
「アメリカも、イギリスも、フランスも、韓国も大変。でも、一番大変なのは日本です。何が大変って、日本が大変と認識していない人が大変多いということが、とっても大変。」
少し前、私はツイッターにこう書いたのですが、これは、特に同世代の人と話していると、よく感じるところ。大雑把に言えば「大企業病」と呼んでもいいのだと思うのですが、驚くほど自分の言葉を持っていない人が多いように感じます。
目の前の問題は見ないことにする。
直視するにはあまりにも醜い。
そうして先送りして、自分の代はやり過ごせばいい。
でも、繰り返しますが、日本では戦後積み上げてきたいろんなことが「風前の灯火」になっています。まずは、その現実を直視すること。直視することは、自分にも「ここまで放置した責任」の一端があると認めることなので辛いのですが、でも直視しないことには物事始まらないと、私は思います。