2017.04.30
出口を考えて
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
25日の日本経済新聞に「「水のJR」は生まれるか」という記事が掲載されていました。
今月(4月)は国鉄が分割民営化され、JR各社が生まれて30年目。
国鉄処理の債務は今も返済途上だが、総じて成功だったと評価できる。
とした上で、国鉄民営化を他の分野にも横展開できないかと期待されているのが「上下水道」だと論じられています。
市町村単位で、とにかく規模が小さいのが弱点という上下水道。
「日本政策投資銀行の試算では、今の体制を続けると、1立法メートルあたり平均で172円する現在の水道料金を、30年後の46年に1.6倍の281円に値上げしないとやっていけない。加えて、中小の市町村では水質管理に携わる技術人材や管路の更新投資原資の確保が難しく、事業の存続性に疑問符がつく」。
なるほど、そこで企業の出番だと。
「事業分割した国鉄とは逆に、水道の場合は民営化に連動して近隣市町村の事業を統合すれば、「規模の経済」の利益も享受できるようになる。宮城県や浜松市、大阪市が水道コンセッションなどに積極的に取り組むゆえんだ」。
まったく話は違いますが、先日、とある方と話をしている時、「ベーシックインカム」の話題になりました。住民1人あたり、毎月一定額の「最低生活保障」を無条件に支給する。年金や失業手当に代替する方策として、スイスでは実際に国民投票も実施されましたが、否決されました。
反対の理由でよく言われることは、財源不足と働く意欲の喪失です。私もその両方があると思うのですが、その両方をミックスして、仮に導入できた場合でも、何らかの事情で最低生活保障が継続できなくなった場合に、再度住民が立ち上がることができるのか、に不安を感じます。
毎月、(働かなくても)最低生活保障がもらえる。
元気でも、失業しても、病気になっても、最低生活保障がもらえる。
ところがある時、政権交代が起こった。
あるいは、どこかの戦争に巻き込まれた。
そういった事態はどこにでも起こりうる時代になってきていると思いますが、そうした事態によって、最低生活保障が打ち切りになった。さて、この時、これまで最低生活保障を受けていた住民1人ひとりは、どうするのか。だったら俺が(私が)立ち上がろう、と1人ひとりに考える余力は残っているのか。その不安があるのではないでしょうか。
話を水道に戻すと、企業の力を借りつつ、上下水道の事業を再生する。こうした話も「出口」を考えておく必要があると思うのです。そうはいっても営利企業。収益が上がると思って参入した企業は、収益が上がらないと判断すれば撤退します。それは、企業自身の道徳とか倫理とか、そういう問題もさることながら、市場(株主)からの重圧を受けていることによる構造的宿命と言ってもいいでしょう。
そうやって企業が撤退した時に、再び自治体に運営していく人と技術とノウハウが残っているかどうか。そのことを慎重に見極める必要があるのではないでしょうか。そして誰もいなくなった、ではシャレになりません。





