2017.02.26
地域が光る
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
立花貴さんの『ひとりの力を信じよう』(英治出版)を読みました。
石巻市雄勝(おがつ)。もともと人口4300人の雄勝は、東日本大震災で建物の8割が津波に流され、人口も1600人まで減少。
そんな雄勝に「モリウミアス」という複合体験施設が2015年7月11日にオープン。その概要を、立花さんはこう語っています。
「モリウミアスは、築93年の、以前は小学校だった木造の建物を、地元の方々をはじめ首都圏の方々、総勢のべ5000人の人と一緒にほとんど手作業で改修してつくった施設です。
モリウミアス(MORIUMIUS)という名前には、「森と、海と、明日へ」という意味が込められています。森や海にふれて、明日を創る、未来を創る学びの場所というわけです。「アス」の英文表記が「US」となっているように、「私たち」という意味も込められています」(P.2)。
もちろん、まったく新しいものを作ろう、という意見もあったようです。でも、土砂をかき出すところから、手作業で始めた。
「手作業での改修を始めたときから2年半、多くの人にいわれました。「ほんとうにできるの?」「そんなことができるわけがない、やめたほうがいい」「新しくつくったほうがいいのでは?」「ここにつくったって人など来やしないよ」などなど。ご相談したほぼすべてのみなさんから、やめておきなさいと直接には言わずとも、ネガティブな意見やアドバイスをいただきました。
もし、更地にゼロから作っていたら、素人がかかわる余地はなかったでしょう。結果的に5000人の方々がボランティアとしてかかわってくれて、そのぶん時間もかかったけれど、人と人とのきずなやつながりも広がり、深まりました。「オープンしたら、こどもたち、孫たちを参加させたい」と言う人が、オープン前からたくさんいました」(P.135-136)。
この話を、とある町の観光について考える人に話したら、深く頷いておられました。
もはや右肩上がりの時代じゃない。
待っていたら誰かが何かをしてくれる時代じゃない。
民と官ができることを持ち寄って、協働で物事をすすめないといけない。
地域の住民一人ひとりがその地域のために自分ができることを考えないといけない。
そして、こうおっしゃいました。
「地域から、いかに競争をなくすかが大事なんです。競争すると敗者が生まれる。きれいごとかもしれないけれど、敗者を生まない仕組みを作らないといけないんです。」
観光とは光を観にくること、とおっしゃったのは水戸岡鋭治さんですが、地域が、その地域に暮らす人々が光っていることが、まずもって大事なことなのだとあらためて強く感じています。