2014.12.13

危機感の方向

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
 先週に引き続き「地方創生」の話題ですが。
 昨日(12日)の日経新聞に、財政破綻の後、財政健全化への取り組みを進めている北海道夕張市の鈴木直道市長のインタビューが掲載されていました。
 記事の最後に紹介された言葉は次の通り。
「夕張市では人口が半減しても持続可能なように、中心部への転居を進めている。市民には歓迎されないが必要なことだ。こうした縮小に備える取り組みに、政府の支援は不十分だ。企業誘致や農業振興も大事だが、住民に不人気の取り組みも後押ししてほしい。ほかの地方自治体には夕張市のように財政破綻する前に危機感を持ってほしい」
 この言葉の前には、人口1億人の維持を目指すのはいいが、目標と現実を分けて考える必要性を主張されてもいます。
 実際に財政破綻をきたした地方自治体の首長の言葉として、「市民に歓迎されない」施策に対する覚悟が含意されている。インタビューの様子まではわかりませんが、少なくとも紙面の言葉から、そう感じました。
 ふと思い出したのですが、先日、何かのテレビで、カジノをわが町にと主張する首長のインタビューが放送されていました。カジノ誘致に生き残りがかかっている、と言わんばかりの勢いだったので、妙に記憶に残っています。
 何でカジノなの?
 カジノそのものへの疑問もさることながら、今あるものを活かすのではなく、新しいものを持ってこないと生き残れないという発想の乏しさに驚いたのです。仮にカジノが誘致できたとして、それが地元の起爆剤になるかどうかなんて、それこそ博打じゃないか、と。そんな博打に首長が打って出るとは、正気の沙汰とは思えません。
 鈴木市長が言うように、「危機感」を抱いての発想なのかもしれませんが、あまりにもベクトルがずれているのではないかと感じます。
「問題なのは、成長戦略がないことではない、成長しなくてもやっていけるための戦略がないことが問題なのだ」
 そうおっしゃったのは、平川克美さんです(『移行期的混乱 経済成長神話の終わり』筑摩書房)。
「経済成長」を「人口減少」に置き換えても同じではないでしょうか。人口が減少することが問題なのではなく、人口が減少してもやっていけるための戦略がないことが問題なのだ、と。
 方向過たずに危機感を持っていたいと、あらためて感じます。


CONTACTお問い合わせ

PAGE TOP