2014.11.09
『地方消滅』
こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
増田寛也さんが書かれた『地方消滅』(中央公論新社)を読みました。
今年5月、896の自治体が「消滅可能性都市」として公表され、報道でも大きく取り上げられました。人口減少問題検討分科会が、独自の将来人口推計人口を基に発表した内容です。
その内容を中心にとりまとめられたのが『地方消滅』ですが、「東京一極集中が招く人口急減」という副題が示すとおり、なぜ一極集中が問題なのかについて、丁寧に解説されていました。
まず、その896の正確な意味ですが、次のように記述されています。
「(人口移動が収束しないという)この推計によると、二〇一〇年から四〇年までの間に「二〇〜三九歳の女性人口」が五割以下に減少する市区町村数は、現在の推計に比べ大幅に増加し、八九六自治体、全体の四九・八%にものぼる結果となった」
地方に仕事がない→東京への人口移動→東京には子どもを産む環境が不十分→ますます人口減少→地方の過疎化・消滅→ますます東京集中。
こういった悪循環によって、ますます人口減少が進んでしまう。その進行を止めなければならない。
そのための具体策も提示されていますが、まずはその意識を国・自治体に持ってもらう。そんな警笛の意味があった進言ではないかと、私は思います。実際、私が住む宇治市は896自治体には含まれていませんが、隣の城陽市や久御山町は名を連ねています。
そんな中、増田さんはが慶應義塾大学樋口美雄教授との対談の中で、次のようにおっしゃっています。
「グローバル経済の時代、と言われますが、すべての企業がグローバルである必要はありません。グローバル経済に対応するには、社外取締役を入れ、会社のルールを世界標準にすることが求められます。新陳代謝を進め、生産性の低いところを切り捨てながら発展していく。でも、そうした企業は日本の企業のなかのせいぜい二割程度ではないか。残りの八割はローカル経済の論理で動いています。新陳代謝や代替性はあまり効かなくて、維持することのほうが重視される。でも、それが悪いというわけではないのです。地域交通や地方の旅館などでも、儲けが出ればそれに越したことはないけれど、何とか成り立っているという状態こそが、その地域にとって非常に有益である例はいくらでもあります。」(P.190-191)
あるいは、コラムニストの小田嶋隆さんは、ローカルとグローバルの違いについて、こうおっしゃいました。
「元来、「ローカル」と「グローバル」は、「地場のもの」と「国際市場向けのもの」を峻別するための暫定的な指標に過ぎない。
両者の間にある違いは、優劣ではない。
どちらかと言えば、「換金性」(金に換算できる性質)や、「普遍性」が、「グローバル」の条件であり、逆に「ローカル」にとどまるものは、「個別的」で「独特」で「換金不能」な物件ということになる。」(http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20141030/273213/?P=1)
このままではいけない。
でも、足元に自信を持ちましょう。
違う語り口で語りかけるお2人の言葉には、そんなメッセージがこめられているのではないかと、私は感じています。