2014.03.15

官僚の一側面

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
 昨年、福山雅治さん主演の映画、『そして父になる』が話題となりました。残念ながら見逃してしまいましたので、今度、是非見てみたいと思っています。
 その作品を生み出したのが、是枝裕和監督ですが、今、そのデビュー作を味わっています。
 といっても、映画ではなく、『雲は答えなかった』(PHP文庫)というドキュメンタリー。水俣病訴訟を担当していた高級官僚、山内豊 さんの自殺。その生と死に、20歳そこそこの是枝さんが迫ったデビュー作となる著作です。
 山内さんの取材を進める上で是枝さんが話を聞いた人は多数でしょうが、その中でももっとも重要なのが奥様でしょう。そのインタビューを申し込んだときの奥様の答えが印象に残っています。
「私にとっては夫の死という全く個人的な出来事ですが、彼の立場を考えると、その死には公共的な意味もあるのだろうと思います」
 そして、奥様はインタビューに応じられました。
 是枝監督は、以来20年以上にわたり、この奥様がおっしゃった「公共」という言葉を考え続けている、とおっしゃっています。
 迫真の内容は本書に譲るとして、将来夫婦となる奥様に向けて、山内さんが手紙に書いた言葉の、ほんのほんの一部をご紹介します。時は、公害対策基本法策定中の1967年。山内さんは、厚生省公害課に配属されていました。
「「公害防止のための施策」がよいか、いや「公害防止に係る施策」がよいか、はたまた「公害防止施策」がよいか、いや「公害対策」にしようなどとどうでもよさそうなことに一時間も二時間も議論して帰ってくる・・・(中略)・・・もっとも法律をつくることのむつかしさも面白さも案外こういうところにあるので、当人たちは大真面目に面白そうに論じ合っているのですからしかたがありません」(P.98)
「こんどのしごとでしみじみ考えさせられたのは、ひとつは、・・・
 もうひとつは役人が熱心だということ。とにかく集まれば口角あわをとばして大議論。もうこの辺でとは誰も言わないのですから立派なものです。役人はなまけものと言われますがどうしてどうしてなかなかしごと熱心なものです。」(P.104-105)
 繰り返しますが、ほんの一部です。そうでない、大きな力が働いているのも事実でしょう。その結果、山内さんの人生は、大きく翻弄されていくことになります。
 官僚は・・・と定型のように言われることが多いので、そうでない一面を、少しメモしておきたくなりました。


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