2014.07.12

自治体と会計手法

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
 ふと思うところがあって、『国際会計基準戦争』(磯山友幸さん、日経BP社)を読みました(正確には再読しました)。
 もう12年ほど前の2002年に書かれた本ですが、この本には『国際会計基準戦争 完結編』(同)という続編があります(買っただけで未読です)。むしろ、完結編を読むために、最初の本を再読したというのが実情です。
 ここにきてIFRSの話題を耳にする機会が多くなってきました。その背景を理解する意味でも、日本がいかに国際会計基準をめぐる対応に遅れをとってきたかが論じられているこの2冊を読んでおかなければ。そう思って、本棚から引っ張り出してきたのです。
 その中に公会計の話も出てくるのですが、おおむねの話の流れは、おそらくご想像の通りです。つまり、
・グローバル化、時価主義化はパブリックセクターにも迫ってきた
・極端な場合、あなたの住む市や町が倒産する
・借金まみれの市町村を救うには、マネジメントをしなければならない
・その手段として、バランスシートを持ち、損益管理をする会計の手法が必要
というお話です。
 いくつか、実際の言葉を拾っておきましょうか。
「限界にきた地方自治体の財政を立て直すうえでも、「会計」が重要な役割を担う」(P.184)
「日本でも、企業経営のセンスを自治体経営に生かそうという動きが強まっているが、まだまだ主流になっているとはいえない」(P.186)
「(国際公会計基準の話題に関連してニュージーランド人のアドバイザーの言葉として)国際的な資金移動が活発になる中で、各国の政府部門の財政状態を比較できるようにすることが重要になっている」(P.188)
「日本は、企業社会における会計のグローバル化の波に乗り遅れ、とてつもない損失をこうむった。公共セクターで同じ過ちを繰り返すことは許されない」(P.191)
 どれもこれも、そうかもしれないと思います。自治体にも民間の発想を入れなければならない面があるのは、事実でしょう。
 一方で、自治体は民間とは違うのも歴然とした事実。もちろん、自治体は利益を出すことが目標ではありませんし、そもそも効率的でない部分を担うのが自治体でしょう。それを、利益や効率といった民間の発想で「経営」するとどうなるのか・・・しわ寄せが弱者に行くことは目に見えているのではないでしょうか。
 民間会計の手法を入れることを否定しているのではありません。それでうまくいった事例だってあると思います。
 ただ、民間会計の手法を入れれば万全だという発想は危険ではないでしょうか。そう思うのです。
 繰り返しですが、民間企業と自治体のモノサシは明らかに違います。存在意義もまったく異なります。民間会計の手法が取り入れられたといっても、そして現時点では「うまくいった」と考えられているとしても、ここ数十年(十数年?)の話でしょう。それが吉と出るのか否かは、もう少し歴史の風雪を経てから評価しても遅くはないと思います。そもそも何をもって「うまくいった」と評価するのも難しいところですし。
 『・・完結編』では、公会計のことがどう取り上げられているか。
 これは次回のお楽しみということで(=1週間以内に読みきります)。


CONTACTお問い合わせ

PAGE TOP