2014.03.01

リーダーシップの向き先は

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
 2月27日の日経新聞に、「地方発・パブリックガバナンス改革への挑戦」という全面広告が掲載されました。
 「地域から、革命を 2014」というフォーラムが開催されたようで、その様子を報じたものです。
 革命とは勇ましいですが、登場された市長さんは次の通り。
  樋渡啓祐武雄市長(44)
  仲川げん奈良市長(37)
  越直美大津市長(38)
  鈴木直道夕張市長(32)
  藤井浩人美濃加茂市長(29)
 いくつか考えさせられるテーマがあったのですが、たとえば武雄市で話題になったのが、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を指定管理者とする図書館のリニューアル事業です。
 市長によれば、人口5万人の都市に、半年で50万人が殺到したのだとか。従来の公共施設は、意見を聞きすぎて可もなく不可もないものになっていた。今回、自分たちが行きたいと思う図書館をCCCと組んで、5か月で大改修した、と。「自治体の経営は企業経営と同様、数字に表れる」とし、観光客が2、3割増加したこと、人口流入により来年度の税収が8〜10%増える見通しであることを語っておられます。
 この図書館に関しては、完成後おもしろい報道がありました。
 それは、地元の県立武雄青陵中が、登下校中の立ち寄りを生徒に制限したという話。根拠は、登下校中に生徒だけで飲食店に出入りすることを校則で禁じていること。図書館内にスターバックスがあることから、立ち寄り制限したところ、一般質問への答弁で市長が、非常に不見識で憤りを感じる、と語ったのです(日経新聞)。
 結局その後、学校側が校則を見直し、制限令は撤回されました(産経新聞)。
 学校側の措置を、ばかばかしいと笑うことは簡単です。でも、もし当事者の立場であれば、難しい問題でしょう。
 図書館にあるスタバには、図書館に来たついでに寄る生徒と、そもそも図書館になど寄るつもりのない生徒が、両方いる。だとすると、今までの校則は、ある意味で形骸化することになります。
 一方で、もしかすると、図書館に寄るつもりはなく来てみたら、面白そうなので図書館に寄ってみる生徒も出てくるかもしれない。そこで、思いがけずに「本に呼ばれ」、向学の意欲がわくかもしれない。その可能性だって、否定できるものではありません。
 実際の施設を見ていませんし、一概に賛否を述べようとも思いません。ただ、気になるのは、この図書館の効果を「数字で語る」市長の言葉です。
 観光客が増える、税収が増える、自治体の経営も数字だ、と。
 そういう効果も大切なのかもしれません。ただ、私はあくまで図書館の役割というのは、子どもたちも含めて、市民の皆さんの可能性を開くことだと考えています。
 本に出会う。何万(?)という蔵書に詰まった知恵に触れる。そうすることで、自分の頭が回転し始め、今までに自分でも気がつかなかったような知への扉が開かれる。そうすることで、武雄市を支える成熟した市民の皆さんが増えてくる。そんな土台になるものではないでしょうか。数字で表れる効果は、その副次的なものにすぎないと、私は思います。
 この全面広告では、民間人登用による体質改善とか、教育委員会に外部からのメスとか、強いリーダーシップを発揮して構造改革をとか、華やかな言葉が並んでいます。
 1つ1つにはなるほどと思うこともあれば、どうなんだろうと思うこともありました。ただ、逆説的になりますが、パブリックガバナンスというのは、突きつめていけば「誰がトップになってもそれなりに回っていく体制」を言うのではないでしょうか。強いリーダーシップが何のために発揮されるべきなのか。そのあたりに、もう少し焦点があてられても良かったような気がします。


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