2015.01.25

基準統一のポイント

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
 公認会計士になると送られてくる月間機関誌に『会計・監査ジャーナル』という雑誌があります。
 自慢ではありませんが、まともに読んだことがありません。いや、読まなければいけないのでしょうが、読もうという気が起こらないのです。
 あの内容。
 あの重さ。
 あの分厚さ。
 どうも、持ち歩くことを生理的に受け付けない。そんな雑誌です(失礼ですね)。
 ところが、今月送られてきた2月号は、ふっとなんとなく目次を眺めてみました(普段はそれすらしないのです)。すると、たまたま、公会計に関する記事が掲載されているではありませんか。
「座談会 地方公会計制度の新展開と公会計協議会の役割」と題した記事です。
 その中で、総務省の自治財政局財務調査課長の原邦彰さんが、これまでの「基準モデル」と「総務省方式改訂モデル」が1つの基準に統一されことに関して、3つのポイントを指摘されています。カッコ書きは、私の補足です。
1.複式(簿記)仕訳をきちんと行ってください、決算統計から作るもの(改訂モデル)からは、もう脱却してください
2.固定資産台帳をしっかり作っていただくことが、出発点になる
3.同じ基準で全ての自治体に作っていただきますので、比較ができる
 その上で、国で標準的なシステムを開発して自治体に無償で配る方向で検討していることや、これまでの「作って見せる公会計」から「使う公会計」にシフトし、予算に反映させることが重要であることを語っておられます。
 まず、システムの無償供与の件ですが、その主眼はコストです。大規模自治体から、小規模自治体まで、ばらばらにシステム導入となると、「事務負担も大変」で「お金もかかる」と。
 私の理解では、システムというのは経営そのものです。経営者の思想や方針、戦略が反映されるのが、システムでしょう。少なくとも、民間企業ではそうだと思いますし、民間企業で、たとえば郵便局と佐川急便と船戸運送(仮)がシステム統一しようという話には、絶対にならない。なるはずがないのです。
 自治体にも民間企業の発想を。
 自治体も、その地域の特性を生かした活路を。
 そう叫ばれることが多いはずですが、ことシステムに関しては、国の一括管理のもとに置かれることを、自治体そのものも望んでいるような気がします。
 もう1つの、使う公会計について。
 今でも、公会計財務書類を作成する現場の方々の間には、作ってどうなるんだ、という本音があるのではないかと想像します。
 公会計財務書類を作って活用すべき。
 公会計財務書類を作って何になるのか。
 この2つの議論がせめぎ合っている、と。
 それぞれの立場での真実を語っておられると思いますので、どちらが正しいということではないでしょう。ただ、どちらの意見にも共通しているのは、財務書類は有効でなければならない、という前提です。私は、そこに疑問を感じています。
 いや、財務書類は無用の長物だ、という意味ではありません。そうではなく、今のものさし、今の尺度だけで、有効だとか使い道があるとかないとか議論することに、大きな意味はないのではないか。そう感じているのです。
 先日、とある自治体の方と話をしていて感じたのですが、自治体が預る資産というのは道路にしろ、学校にしろ、公園にしろ、50年単位で考えていく資産ばかりでしょう。そんな資産が90%を占める財務書類について、この2年、3年という視野で使い道を論じたところで仕方ありません。50年作り続けて初めて見えてくるものがある。それくらいの長期的視野を持つ必要があると、私は思っています。
 簡単に言えば、とにかく作り続けましょう、と。
 統一した公会計により、自治体間の比較可能性が確保できる。よく言われることですが、比較することよりも何よりも、まずは作り続けることと、作り続けることで自分たちの足元にはどんな資源があるのかを発見することのほうが、よほど重要なことだと、私は思います。


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