2015.01.15
第4回 19年前の中国一人旅
【19年前の中国一人旅 蘭州(ランシュウ)〜西寧(シーニン)編】
このシリーズは私が大学4回生の時(19年前)に中国一人旅した際の道中に書いた日記を記載してたものです。前回は、私が北京〜蘭州にかけての珍道中を記載いたしましたが、今回は蘭州〜西寧にかけての日記を記載したいと思います。
旅行期間:平成7年8月25日〜8月26日
旅行行程:神戸港〜天津〜北京〜蘭州〜西寧〜ゴルムド〜ラサ(チベット)〜エベレストベースキャンプ〜ラサ〜成都〜昆明〜上海〜大阪港
【8月25日 天気:曇のち晴】
(前回は、8月25日にランチを浮世絵の飾ってある蘭州の店で大量に食べ、店員たちと日中友好を果たした?ところまで記載しました。)
そんなこんなで、楽しいランチのひと時は過ぎ、18.5元(当時は1元=10円程度)払って店を出た。ちなみに、この店のオーナーは日本人らしく、浮世絵が飾ってあった。久しぶりの満腹感に、俺はかなりうれしくなっていた。そのせいか、蘭州駅に行って切符を買うつもりが、別の方向にどんどん歩いていた。30分以上歩いて、とうとう行き止まりになって初めて道を間違えたことに気付いた。道行く人に蘭州駅はどこだと聞いても、何かゴチャゴチャした説明をしてくれる。どうやら、かなり遠くまで来てしまったみたいだ。しばらくして、またおばさんに聞くと、親切にもいろんな人に聞いてくれて、バス停まで案内し、これで行きなさい!と言って去って行った。何か、イカしてるおばちゃんだ。ありがとう!
バスに10分ぐらい揺られ蘭州駅へ到着。まず、外国人窓口を探した。人に聞いてみると、どうやら今日は閉まっているらしい・・・ということは、人民の列に並んで買うしかない(1時間以上並ぶ行列ができている。おまけに窓口まで到着したとしても現地人並みの応答ができなければ切符を売ってくれない可能性大)。俺は決心を固め列に並んだ。すると、色んなヤツが横から声をかけてくる。どうやら西寧までバスで行かないか?と言っているが、全部断って前に進んだ。1時間以上並んでようやく0番窓口に着いた。しかし、窓口付近は、割り込みがひどく常に戦場だった。割り込んで切符を買い、後ろに並んでいる人に高く売ることを商売にしているヤツがたくさんいた。
やっとのことで先頭になり、窓口の女性に、CITSでもらった紙(俺の買いたいチケットなどを紙に詳しく書いてくれた)を渡し、一か八か学生証も出した。ここで追放されたら終わりだと、こっちも必死で窓口の女性に訴えた。すると、厳しい表情ながらも窓口の女性は俺の欲しいチケットを理解してくれたようで、100元を差し出すとチケットと80元以上ものお釣りをくれた。北京で作った学生証も生きたようで、格安で買うことができた!(留学生は現地人価格で買える)
嵐のような切符売り場を出て、俺は何とも言えない満足感に浸っていた。やればできる。熱意さえあれば、どこでも生きていける。そう確信した。チベットも行く気があれば、絶対行ける。そう感じた。
ガイド本の『地球の歩き方』によれば、白塔山(パイタオシャン)公園からの景色がきれいだと書いているので、バスで向かった。あるバス停で下車して北上すると橋が見え、黄河が見えた。橋の上から黄河を見ると、本当に真っ黄っ黄だ。透明度1 ってところだ。よくもまあ、こんな水の所に文明など栄えたものだと不思議に思えた。
【橋の上から見た黄河】
橋を渡るとすぐ白塔山公園があった。入場料は、中国人2元、外国人5元。俺は外国人バレバレの短パン、Tシャツ、ウエストポーチにリュックサックだったが、迷わず2元出し、一言『イーガ』(1つという意味)と言った。切符売りの人は不審そうな顔で俺を見ていたが、諦めてチケットをくれた。中国人がいつも手抜きで働くのをこういう所で利用しなければならない。
【白塔山公園入り口付近(写真は筆者ではない)】
俺は3元儲かってウキウキして山を登った。かなり登ってから売店の兄ちゃんと話をした。彼は大学生で今はバイトでここにいるらしい。そこで座ってしゃべっていると、いつも通り珍しがって中国人達が集まってきた。ふと気がつくと、周りに5人ぐらいいた。英語でしゃべっているので、彼らに意味はわからないようだが、俺のカッコとかジロジロ見ている。兄ちゃんがお茶を5元で飲むか?と言うので、ちょうど喉も乾いていた頃でいただくことにした。彼は喜んで持ってきてくれた。大きなポットとコップである。コップのふたを開けると、漢方の薬草みたいな枯れ葉みたいな、木の実みたいな、色んなものが入っている。。。これは体に良いのか?と聞くと、無茶苦茶良いと言うので、俺は腹をくくって飲むことにした。味は、底に砂糖があるので甘く、結構うまい。木の実が3つほどプカプカ浮いていて、飲みにくいところだけが難点だ。
【白塔山公園で仲良くなった中国人達(筆者はいない)】
お茶を飲みながら、色んなことを話した。旅行の日程から、政治の話まで幅広かった。彼は色々と日本の事を聞きたがった。目の輝いたヤツで話しているとおもしろい。一緒に写真も撮り、すっかり仲良しになった。ただ、彼の英語はかなりの中国英語で、例えば『NEW』を『ネイ』と読んだり、結構無茶苦茶だが、何とか言いたいことはわかったので、良かった。1時間以上もそれから話をして、お別れした。みんな手を振って、『再見!!!』と見送ってくれた。どこの国の人も同じ『人間』なんだな、と感じた。
ご機嫌で白塔山公園を下山していると、腹が痛くなってきた。どうやらさっきのお茶が効いているらしい。。。ヤバイかなーとは思っていたけど・・・。しかし、スーパーマーケットでトイレを借りて一件落着。
【8月26日 天気:晴れ(西寧は一時雨)】
今日、8:30に目覚めた。カーテンを開けてもすぐ壁で、真っ暗なので朝かどうかわからない。とりあえず出発の準備をして、9:45頃に出発。食糧を買って駅の待合室へ。パンとコーラを食べて、14:45発の列車を待った。待合室で隣に若い夫婦が座って、しゃべっていた。二人は成都に行くそうで、かなり親しくなって2時間以上話していた。二人の住所と電話番号まで教えてくれて、余りに楽しかったので、中国人に渡すように持ってきた日本土産のソーラー電卓をプレゼントした(我が家は電気屋だったので、粗品としてのソーラー電卓がたくさん家にあったもの)。日本円で2,000円ぐらい、中国で200元ぐらいかなと話すると、二人は目を真ん丸にした。そろそろ出発しようとし、西寧はどのホームに行けば良いですかと聞くと、案内してやると言って、俺のリュックまで持って『いいから、いいから』と聞かない。そんなつもりで電卓をあげた訳じゃないので悪い気もしたが、そんなに喜んでくれるならと、その時は甘えて持ってもらった。
【仲良くなった中国人夫妻】
14:45発の列車で出発。せっかくなので、日本から持って行った本『中国』を読んだ。4時間余りの車内で、結構読めた。周りの中国人は、俺にしゃべりかけたそうにしているが、ここで一回しゃべったらずーっと、しゃべり続けるだろうし、本が読めないと思ったので最後までしゃべらずに西寧まで行った。窓から外を見ると素晴らしい景色が広がっていた。
18:45に西寧駅に着いた。
【西寧駅】
駅の外に出て、タクシーだらけなのに驚いた。勧誘のおじさん達を振り払って前へ進み、『地球の歩き方』を開いて宿を探した。その時、一人の男が前から歩いてきた。妙に近づいてくるぞと思ったけど、そのままドンと当たった。そいつは、わざと持っていたビンを落としてパリンと割れた。すると、その男は『おいっ、お前のせいで俺の大切なビンが割れたじゃないか!どうしてくれるんだ、金を払え!!!』といった感じで、俺の顔に近づいて大声で文句を言ってきた。近くにいた中国人達も集まってきて、どうしたどうしたと言う感じで、俺の周りを囲みだした。
『やばいな・・・』
中国に来て、一番の危機感だった。ただ、ここで弱みを見せては日本代表として男がすたる。俺は無言でじっと男を怒りの目で見続け、逆に男に近づいて行った。男は身長160センチぐらい、俺が178センチぐらい。目の前まで近づくと、かなり見下ろす形になる。しばらくすると、男の目と言葉の勢いがだんだん弱まるのがわかってきた。
反撃に出る時が来たが、頭の中を色々な中国語、英語がグルグル回っていたが、一番怒りを表すのはやはり日本語である。気が付くと、俺は腕を振り上げ、日本語で怒り散らしていた。
『お前さっきからガチャガチャ何言うとんねん!お前から当たってきたんやろが!!どっか行け!!!!!』
おそらく、西寧の街に初めて響く日本人(特に関西弁)の雄叫びだっただろう。その男は全く意味のわからない言葉に驚き、一目散に逃げて行った。集まっていた中国人もあっと言う間に消えた。
危機は去ったものの俺は機嫌が悪くなり、ムッとした表情で歩いた。周りで俺を見ている西寧の人達がみんな敵に見えた。15分ぐらい歩いて、目的のホテルである西寧ホテルに着いた。フロントに行くと、何と日本人がいるではないか。久しぶりに日本人に会った(事件の後だったのでとてもうれしかった)。彼は竹山君だ。同じくイギリス人のニッキとも会った。俺も15元+10元のディポジット(保証金であり最後に返してくれる)を払い、みんな同じ部屋へ。するとそこには、6つのベットがあり、うち5人は日本人、1人はニッキとなった。ニッキは英語の先生で、日本に2年いたらしい。従って、日本語も上手い。部屋は日本語一色である(あー、日本語は楽だ)。
みんなで食事後、時間が遅かったのでシャワーが使えず、便所の手を洗うところで頭を洗った。部屋のメンバーのうち、3人はチベットに行くと言うので心強い。しかし、闇バス(非公式なバス)でないと行けないとか、チベットは記念の年で外国人を追い出しているので入るのは危険だとか、色んな話があって本当に流動的だ。何はともあれ、明日、ゴルムド(チベットへの玄関口となる町)までの列車のチケットを買って、できれば明日ゴルムドに向けて出発したい。ちなみに、西寧は標高2,200m。チベットに向けて徐々に体を高度に慣らしているが、朝晩はかなり冷える。。。