2014.09.08
第3回 19年前の中国一人旅
これは、私が大学生の時に一人で中国を旅した時に書いた日記を記載したものです。
乱筆乱文、お許しください。
今回は、北京から蘭州までの珍道中となります。
旅行期間:平成7年8月17日〜9月25日
旅行行程:神戸港〜天津〜北京〜蘭州〜西寧〜ゴルムド〜ラサ(チベット)〜エベレストベースキャンプ〜ラサ〜成都〜昆明〜上海〜大阪港
【8月23日 天気:快晴】
今日は、いよいよ(北京で一緒に行動していた大野君との)別れの日だ。朝9時に目覚めた。昨日の夜中に、大野君(同室)が何か大声でしゃべっているのに驚いたが、どうやら寝言だったようだ。朝、テレビをつけると、『アルプスの少女ハイジ』をやっていた。終わりの歌が日本語だったので、何だか落ち着いた。大野君と電車に乗って北京駅へ。北京駅で一緒に写真を撮り、大野君とは別れた。大野君もこの先何とか頑張ってほしい。
中国へ来て、初めて全くの日本人一人となった。北京駅へ入り、食料を少し買い込んで蘭州行きの列車に乗った。俺は『硬臥(横になれる寝台車で3段ベット)』の2段目だが、思っていたよりもきれいだし、駅員もホームにいる人はかなりしっかりしている。午前11時1分発車だ。俺は12両目の17の中段である。俺の上段の中国人兄ちゃんは20歳で日本人の俺に興味津々のようだ。日本から持って行った本を見せてくれとか、いろいろちょっかいを出してくるけど、おもしろいやつだ。彼は『包頭』で降りるらしい。横のおじさんと、その下のおじさんは蘭州まで行くらしいので、着いたら教えてやると言ってくれたのは良いが、よく考えたら蘭州は終点だ。車両の中は結構きれいで、公安の人や車掌などがよく行き来する。棚にかばんを置いても、ちょっとでも通路にはみ出すと怒られるし、タオルを干すのも窓際に干す時は外からきれいに見えるようにやり直させられる。床も掃除に来るし、日本以上のサービスぶりと言うか、やり過ぎというか、そんなとこだ。
同じ部屋の人と楽しくしゃべったり、筆談したりしながら時は過ぎた。溜まっていた日記を書こうと窓際へ行くと、日本人留学生の山田君が話しかけてきた。彼はトルファンへ行ったらきれいだと言う。彼と同じ部屋のドイツ人も蘭州へ行くというのでドイツ人ともしゃべった。英語が上手だ。そうこうしているうちに、眠くなって午後4時〜7時30分ぐらいまで眠った。山田君は同じ部屋の人が『フフホト』に行くそうで、ついて行くらしい。この列車には日本人は私たち2人だけのようだが、深夜0時に『フフホト』に着いて下車するそうだ。彼は、何か心細そうで、俺が寝ている間も何度も部屋を見に来ていたらしい。
夜ご飯を食堂車で食べた。結構油だらけだったが、腹がふくれたので満足。9元だった。それから列車内をウロウロしていると、突然真っ暗になり消灯となった。何の前触れもなかった。夕方寝てしまったので、ベッドに入ってもなかなか眠れなかった。
≪ワンポイントアドバイス:19年前の中国寝台列車(硬臥)の席はどこが良いか≫
列車の硬臥に乗る時は、上・中・下のうち、中段が最も良い。なぜなら、上段はすぐ上にライトがあるので眩しく、スピーカーが近いので放送がうるさく、また冷房が切れている時は暑いのでダメ。下段は、昼寝したくてもみんなが自分のベットに座るのでダメ。外の景色も見にくい。中段なら、寝ころびながら外の景色も見れるし、ライトや放送の声も気にならない。
【8月24日 天気:快晴】
今日は列車で目覚めた。午前10時近かった。すでに、山田君と上の兄ちゃんはいなかった。朝からボーーッとしている。途中で、斜め下のおじさんと英語でしゃべるぐらいだ。ソーセージ3本を7.5元で買って、カップラーメンと一緒に朝飯にした。昼からも日記や本読みをしていた。
夜9時になり(中国は広いが全国単一時間帯のため、西へ行けば行くほど夜が明るく、朝は遅い)、蘭州の町が広がってきた。今までの草原の景色とは違い、かなり開けた町である。街のネオンがまぶしい。ドイツ人の彼と一緒のホテルに泊まることにしたのは良いが、列車から降りると、俺の部屋にいたおじさん達が、ホテルに案内してやると言ってくれた。でも俺たちは行くホテルを決めているのだ、という事を何とか伝えようと必死になって説明し、ふと気づくとドイツ人の彼がいないではないか!俺が中国人に絡まれていると思ったのかわからないが姿を消してしまった。少し探したがもうええわ!と思って、ホテルまでおじさんに案内してもらった。おじさんは別の方向が家なのに親切だ。『謝々』と御礼を言い、握手を交わしてお別れした。
宿は、迎賓飯店でツインルームしかなく、86元だという。ツインを独り占めして86元は安いと思って、2泊することにした。部屋は204でテレビ、扇風機、風呂はちゃんとある。溜まっていた洗濯物を洗い、扇風機で乾かした。風呂に入ろうと浴槽を見ると、変な虫が2〜3匹歩いているし、髪の毛はいっぱい落ちているし、ひどいもんだ。とりあえず風呂に入り、日記を書いた。腹が減ったが、外へ出るのも面倒だし、眠ることにする。
【8月25日 天気:曇りのち晴れ】
今日、目覚まし前の7時30分に一回目覚め、また寝た。目覚ましを8時30分に設定しておいたので、次は8時30分に目覚めた。ボーーっとしていると、部屋の電話が鳴った。何かと思って受話器を取ると、何と電話のコードが根本からスポッと抜けて電話が切れた。朝からギャグみたいなことだなーと呆れて、コードを電話に刺したら、10分後にまた電話が鳴った。今度は慎重に受話器を取ると、いきなり早口の中国語で何やら言っている。一通り聞いてから、『ティンプトン(何を言ってるかわかりません)』と言うと、電話の相手は諦めて電話を切った。急いで出発の準備をしていると、今度はドアを誰かがノックしている。開けてみると、中国人の老人が立っていて何やら言っているが、『不要(プーヤオ=必要ありません)』と言ってドアを閉めた。まったく、よくわからんホテルだ。
大きなリュックをフロントに預け、いざ蘭州の街に出発!まずは、CITS(外国人中国旅行者のためのお助け窓口)に行ってチベットへ行くための交通手段の相談である。CITSを探して、ひたすら北上した。30分ぐらいしてやっと2階にCITSがあるという金城飯店へ着いた。きれいなホテルだ。だが、中に入って2階へ行ってもCITSらしきものは見当たらない。ホテルの中にいた人に聞くと、外へ連れて行かれ、別の蘭州飯店の10階にある、と言う。一度は『謝々(シェシェ)』と言ったものの、『地球の歩き方』というガイド本をよく読んでみると、金城飯店の『裏の建物』の2階と書いてあるのに気づき、あの人のいう事は信用しないことにして、もう一度金城飯店に入り、今度はフロントで聞いてみると、丁寧に道を教えてくれ、その通り裏へ行くと無事CITSに到着した(蘭州飯店の10階には何があるのか?過去、中国に入ってから道を聞いて何度も騙されている教訓が生きた)。
CITSの中には、英語の上手な女性がいて助かった。俺は、ゴルムドと言う小さな町に行き、そこからバスで3日かけてチベットへ行く(体を徐々に高度に慣らすためと、コストが安いため)ことを目指していたが、今年は、チベット自治区成立30周年の記念の年で外国人を排除しているらしく、どのルートからでも、そもそも危険だという。せめて、成都から飛行機でチベットに入る方が良いと勧められた。途中から日本人のお兄さんが出てきて、ゴルムドからラサ(チベット自治区の区都)へのバスは、ゴルムドまで行かないと実際のところ行けるかどうか(日本人を受け入れてくれるか)わからない、とやはりお勧めしない。わからないなら、行ってやろうじゃないか、と言うのが井上豪である。迷わず、ゴルムドへ行くことにした。ただ、蘭州〜ゴルムドへの列車はなく、一旦、西寧(シーニン)という町で下車し、新たにゴルムドまでの切符を買うはめになった。CITSのおばちゃんは、西寧までの切符は直接駅で並んで買った方が安いし、1時間ぐらい並べば買える、という。しかし、中国語が流暢にしゃべれる訳ではないので窓口で困ると言うと、紙に切符を買うために必要な中国語を全部書いてくれた。日本語の上手な方に名刺ももらい、心強くなった。
CITSを出て蘭州駅に行く前に飯にした。昨日の夜から相当腹が減っていたので、今日はちゃんとしたご飯を食べようと店を探した。すると、きれいな店があったので中に入り、店員さんに中国語で『食べられるか?』と聞くと、まだ駄目だ、と言う。20分後の開店らしい。では、20分間ここで待たせてくれと頼んだら、店員さんは俺が外国人でしかも日本人だということに興味津々で、どの料理がおいしいとか、何が食べたいとか、話かけてくる。俺が、ネギが好きだと言うと、どの料理にネギが入っているか教えてくれた。かなり腹が減っていたので、おかずを2品注文した。そのうち1つには、ネギが入っていないのを注文したが、わざわざネギを入れてくれた。客が俺一人だったせいもあり、みんな俺に注目している。厨房からも何人か出てきて、日本人の食べっぷりをめずらしそうに見ている(ほぼ店員に360度囲まれて食べた)。ここで、日本男児を見せねば!と、大盛りライスを3杯も食った。やつらは、たまげた顔をしていた。緑茶も注文して飲んでいたが、全部はとてもじゃないけど飲めないので、周りの店員にふるまったら、すごく喜んでくれた。まさに、日中友好である。
そんなこんなで、楽しいひと時は過ぎ、18.5元払って店を出た。ちなみに、この店のオーナーは日本人らしく、浮世絵が飾ってあった。久しぶりの満腹感に、俺はかなりうれしくなっていた。そのせいか、蘭州駅に行って切符を買うつもりが、別の方向にどんどん歩いていた。30分以上歩いて、とうとう行き止まりになって初めて道を間違えたことに気付いた。道行く人に蘭州駅はどこだと聞いても、何かゴチャゴチャした説明をしてくれる。どうやら、かなり遠くまで来てしまったみたいだ。しばらくして、またおばさんに聞くと、親切にもいろんな人に聞いてくれて、バス停まで案内し、これで行きなさい!と言って去って行った。何か、イカしてるおばちゃんだ。ありがとう!
さて、今回はここまで。この後、井上は無事に西寧行きの列車チケットを手に入れ、さらにゴルムドへ行って、バスでチベットへ入れるのでしょうか?続きは、次回以降となります。お楽しみに!!!