2016.09.23
第7回 21年前の中国一人旅(加齢につきタイトル変更)
【21年前の中国一人旅 チベット編】
このシリーズは私が大学4回生の時(21年前)に中国一人旅した際の道中に書いた日記を記載したものです。前回は、ラサ(チベットの区都)での珍道中を記載いたしましたが、今回はラサ(チベット)~エベレストベースキャンプへ向かう道中での日記を記載したいと思います。
今回のブログに記載の旅行期間:平成7年9月7日~9月9日
旅行行程:神戸港~天津~北京~蘭州~西寧~ゴルムド~ラサ(チベット)~エベレストベースキャンプ~ラサ~成都~昆明~上海~大阪港
【9月7日 天気:曇りのち一時晴れ】
今日、9時に目覚めた(中国は国内全土が単一時間であり時差を調整しないため、北京よりもはるかに西にあるチベットでは夜明けが8時頃となる)。1週間ぶりに咳の出ない夜だったので疲れが取れた。今日は、そう、チョモランマへの出発の日である。昨日のうちにほとんど支度はできているので、朝は比較的のんびりできた。朝食後、旅のメンバー5名でチョモランマ行のランドクルーザーが来るのを待った。10時40分頃、ランドクルーザーが登場。いよいよチョモランマツアーが始まった。チベット自治区の区都であるラサを抜け、絵のような景色の中を車は西へ走り続けた、と言いたいところだが、ボロいランドクルーザーなので途中何度か止まった。。。それでも、運転手のMr.ツゲ(チベット人)がボンネットを開けて何とか直しつつ、前に進んだ。あまりにも素晴らしい景色の連続で皆、言葉を失って景色に見とれていた。5時間近く走って、シガツェという町に着いた。
【エベレストツアーのメンバー紹介】
八木さん・・・50歳ぐらいで中国に留学中。愛知県出身。
仙仁さん・・・22歳で中国に留学中。埼玉県出身。
加藤さん・・・24歳で愛知大学在学中。愛知県在住。
松尾さん・・・20歳で同志社大学在学中(たまたま私と同じ)。京都府在住。
ツゲさん・・・チベット人運転手(50歳ぐらいか?)
井上(私)・・・22歳で同志社大学在学中。滋賀県在住。
【車の故障(写真は加藤さん)】
シガツェは標高3,900mのチベット第2の都市である。しかし、町の規模は小さい。タクシーはなく、人力車が走っていたり、トラクターが人を乗せて走っている。町の人の表情は人懐っこく、『タシデレ(こんにちは)』と言うと、すぐに『タシデレ~』という言葉と笑顔が返ってくる。チベット族の人々はラサにしても、シガツェにしても、みんなとてもゆったりしていて、漢族のような落ち着きの無さは見当たらない。旦増旅館というホテルにとりあえず荷物を置いて、飯を食べに行くことにした。ホテルのフロントで、どこがおいしいか聞くと、隣のレストラン?食堂?を紹介してくれた。中に入ると、日本人だとわかったとたんVIP扱いで、奥の特別室に案内され、ビールは注いでくれるわ、お茶は注いでくれるわ、最高のもてなしだった。チャーハン、玉子とトマトのスープ、白菜と羊肉の炒め物などをいただいた。腹ペコだったので、メンバー5人で全部食べた。八木さんは特に料理と接客に絶賛していてビールも呑んで上機嫌だったので78元中50元を出してくれた。残り28元を4人で割って一人7元と格安だった。
食後、5人でタシルンポ寺(チベット仏教ゲルク派最大の寺院)へ向かって歩いていると、途中で子供達がついてきてしゃべったり、老人グループが日本人とわかったとたん握手を求めてきたり、大変だったが、チベット族独特の人懐っこさには、嫌な気は全然しない。グル―ッと町を1周しホテルに戻った。
【シガツェの人懐っこい子供達】
ホテルに戻ると、先ほどの隣のレストランのオーナー?がメニューの日本語版を作って欲しいと言うので、みんなでまたレストランに行き、アーでもないコーでもないと言いながら、楽しく日本語訳のメニューを完成させた。部屋に戻って、みんなバタバタと眠りだした(5人同じ部屋)。特に八木さんは50歳を超えているが、すごく元気でがんばっている。俺も負けてはいられないので、日記を書いて、明日に向けさっさと寝た。
【9月8日 天気:晴れ時々曇り(一時あられは標高5,000m地点)】
今日、8時に目覚めた。9時30分出発の予定だったが、みんな早く起きたので9時出発に早めた。昨日のように素晴らしい景色の中をず―っと走った。どこまで行ってもすごい景色だ。日本にも少し分けて欲しい。ラツェで食事にしようと思っていたので、がんばって走った。途中、1回お茶休憩をはさんで、ラツェに13時20分頃に到着した。腹ペコで、チャーハン、チンジャオロース、白菜の炒め物などを食べた。めちゃめちゃおいしかった。テングリに向けて15時に出発したが、ここからの道は、結構ひどい道だった。デコボコだらけで、崖はあるし、大変だ(もちろん舗装やガードレールはない)。それでも昼食後でウトウトし、気が付くと標高5,220mの峠に着いた。そこで降りて写真を撮った。日本人女性と白人のカップルが自転車でカトマンドゥを目指していた。一服してから峠を下ったが、道は相変わらず悪いので、スピードが出ない。しばらく行くと、風の谷のナウシカに出てくるような景色が広がってきたかと思うと、運転手が車を止め、『降りろ、温泉がある』と言う。降りてみると、確かに川沿いに温泉が湧いていた。硫黄の匂いがして、良い雰囲気だ。靴を脱いで、足湯をした。何とも言えないうれしさがあり、ふと日本を思い出す瞬間だった。30分ほどゆっくりして、テングリへ向かった。私たちは絶景の中をひたすら走った。
【天然温泉にて足湯(左から加藤さん、井上、松尾さん)】
18時30分、テングリに到着し『定日○○○駅軍人総合服務社招待所』(○○○は日本語で表現できずすいません)という長い名前の宿へチェックイン。一見、マジかいな・・・と思うような刑務所みたいな建物だけど、部屋を見ると意外にきれいだった。晩御飯はラーメンしかないと言うので、それだけを食べた。きしめんみたいな麺で、結構おいしかった。標高が高い上に空気が澄んでいて、満月に近い月が最高にきれいだったので写真に撮り(現像するとイマイチでした・・・)、部屋へ戻った。今日は、運転手のツゲさんも一緒の部屋なので、みんな仲良く一緒に寝れそうだ。それにしても、8月17日に日本を出て20日過ぎたが、行きの船しか予約してない状況でよくここまで来れたもんだ。明日は、いよいよチョモランマだ。何が何でもがんばるぞ!ちなみに、日の入りは21時だった。
【9月9日 天気:快晴のち晴れ】
今日、8時30分頃に目覚めた。昨夜23時30分頃にめちゃめちゃお腹が痛くなり、明るい月明かりの下、野外で大をした。どうも晩御飯のラーメンを食べたときの割り箸が悪かったようだ。真っ黒だったからなー。。。それにしても、大をしている間、周りを野犬に囲まれている事に気づかず、(と言うか野犬が寝ていた所に俺が入って行ったようだ)、突然ワンワン吠えられた時は噛み殺されると思った。こんな状態で噛み殺されるのも嫌だったが、途中だったので走り出すわけにもいかず、カニさん歩きで徐々に移動しつつ、覚悟を決めて最後まで用を足したが、落ち着いてできなかった。何とか部屋へ戻り、その後はよく眠れた。
今日の天気は最高だ!雲一つない、全くの快晴である。こりゃー、最高のチョモランマが見られるぞと皆気合を入れた。関所でパスポート等のチェックを受けたが、加藤さんはなぜか撮った写真を没収されていた。どんな写真を撮っていたのだろう?快晴の天気の下、走っているとチュー村に着いた。ここには検問があり、1人120元払わされた。これは今回のチベットの旅行社(CITS)では聞いていない話なので、戻って旅費精算する際に交渉することにする。チュー村を抜けて、ランドクルーザーは上へ上へと登って行った。道なき道をどんどん進んだ。川を渡り、岩や石の上を乗り越え、僕らの車はツゲ氏のドライビングにより何とか快調に進んだ。5,150mのパン・ラ峠が近づいてきた。この山を越えるとどんな景色が見えるのかな?俺たちの期待はどんどん膨らんでいった。
そして、いよいよ峠にさしかかった時、いきなり視界は開けたかと思うと、目の前に大ヒマラヤ山脈が連なっていた。そして、中央にはひときわ高く、白く輝いている山がある。
『チョモランマや―――――っ!!!』
俺たちは大声で叫び、共に握手をして抱き合って喜んだ。パン・ラ峠で車を止め、絶景のヒマラヤ山脈をバックに写真を撮った。
【パン・ラ峠にて(左から、加藤さん、仙仁さん、松尾さん、八木さん、ツゲさん】
30分ぐらいゆっくりしてから、車に乗ってベースキャンプ近くのロンブクに向け出発した。ここからは、一旦下りである。途中、色んな村を通過した。多くの村では麦を栽培し、ヒマラヤ山脈からの水で潤っているようだ。しばらく行くと、パドゥーチ村に着いた。ここで昼食を食べることにして、車を止めた。とたんに子供たちが集まってきた。『地球の歩き方』を見せると、大喜びし表紙のカラーページが欲しいと言う。仕方ないので、カラーページを全部あげた。
店の中に入っていくと、やはり日本人だということで非常に歓迎してくれた。までは良かったのだが、食事がなかなか出てこない。ジャガイモをトントン切り出したかと思えば、火を燃やして1から飯を作っている。おかげで、1時間30分ほど待って、ようやくジャガイモを煮たものと、野菜を炒めたものが出てきた。とりあえず大急ぎで食べ、ろうそくや食料を少し買って出発した。
ガタガタの道をひたすら走り、17時頃ロンブクの寺に到着した。これから数日は、この寺に泊めてもらう。お坊さんが案内してくれるが、『タシデレ!』と挨拶すると、『ハロー』と返してくる。かなり外国人慣れした坊さんだ。案内された部屋は山小屋といった趣のある部屋で、6人何とかカツカツで寝れると言う感じだ。とりあえず、到着祝いの乾杯をして、ビールを開けた。運転手のツゲ氏もご機嫌の様子だ。それから、部屋を温めようと、薪やヤク(牛)の糞を集め、部屋で火をおこした。煙だらけで大変だったが何とか部屋は温まった。
【山小屋にて(左から松尾さん、八木さん、仙仁さん、ツゲさん)】
晩御飯は、坊さんに聞くと卵しかないというので、ゆで卵20個を6人で食べた。めちゃめちゃうまい。昼飯もろくに食べられなかったので、腹ペコには最高だ。あと、ビスケットとビールで今夜の食事は終わった。この寺からチョモランマは非常によく見え、夕焼けのチョモランマはまた格別だった。
部屋に5本のろうそくを立て、夜の明かりにした。この中で今俺は日記を書いている。まだ22時にもなっていないのに、皆もう眠っている。太陽が沈んで暗くなったのが21時だから、太陽とともに生活しているような感じだ。でも、山小屋でろうそく5本を立てて夜を過ごすなんて、何かシャレてて気分がいい。しかも、世界最高峰のチョモランマの前である。明日は、ベースキャンプまで歩いて行く。明日もまたがんばろう!
井上 豪