2010.01.29
貴重な経験
みなさん、こんばんは。
今週は、私の会計士人生で、最もさまざまな事がある週です。
セミナー講師、内部統制プロジェクトの報告会、会社更生法の保全管理処分打ち合わせ、執行立会、店舗撤退に関する意思決定補助、買収先のデューデリジェンス、会計士実務補習所のディスカッション講師、旧あずさ担当クライアントの方と同窓会?、社労士・司法書士・会計士税理士の共同による許認可に関するチェックリストの作成ミーティング、など。特に、保全管理処分の立会は、新鮮かつ緊張しました。
私は初体験だったのですが、会社更生法や民事再生法は倒産する会社が申し立てるだけではなく、債権者側(会社にお金を貸している側)からも一定の理由があれば申し立てることができます。今回は、その極めてめずらしい債権者側の申し立てによるもので、独立している会計士が一生に1度当たればラッキーというレベルだそうです。ベテランの弁護士さんと話をしていても、20数年弁護士をしているが、初めてだ。弁護士会でも1年に1件あるかどうかの案件だ、とおっしゃってました。それゆえ、貴重な経験になりますが、当然身の危険を伴います。だから、井上に声がかかるわけです。。。
会社からすれば、いきなり裁判所からたくさんの人がやってきて、経営権と財産権を奪われるわけですから、たまったものではありません。私も、生まれて初めて『はい、動かないで』というようなことを言いました・・・。貴重な経験でした。
みなさん、ご存知かもしれませんが、一言に『倒産』といってもいろんなパターンがあります。
つぶさずに再建させるもの→会社更生法、民事再生法、私的整理
つぶしてしまうもの→破産、特別清算、私的整理
会社更生法は、経営者の経営権をも奪うもので、厳しい内容です。JALなんかそうで、大規模な企業に多い再生法です。
民事再生法は、経営者の経営権は原則継続させて再建させます。
いずれも、再生をめざしてスタートしますが、その中でやっぱり再生は無理だ、となれば、破産へ移行します。昔の山一証券は破産でしたね。
しかし、法的手続に入る前の経営者の心理状態は、かなり厳しいものがあり、通常では想像できないような、行動をとられていることが多いです。お話を聞いていると、『今から思えば、あの時の心理状態は異常やったなー』とおっしゃる社長の目が遠くを見つめておられました。
人間、間違いを犯すことはあります。
ただ、そこから復活できる風土は今の日本にはまだまだ厳しいように思います。
ほとんどの会社は、借金をして経営しています。従業員にはわかりにくいことですが、社長は上場会社以外であれば、ほとんど個人保証に入っています。つまり、会社と運命共同体なわけです。借金が返せなくなって会社が倒産したら、自分も自己破産せざるを得ないということです。それだけ、腹をくくって仕事をしているわけですね。
よく簡単に、『おれ、社長やりたいんです!』という人がいますが、上述のようなことをわかって言ってるのかな?と思います。お金持ちで偉そうにしているイメージがあるかもしれませんが、実はおもーいものをしょっているんです。ハイリスク・ハイリターンなわけです。
でも、どんどん優秀な経営者が出てくれないと、日本はこれから先真っ暗です。
再生手続きを経営者に優位なようにして、経営者になる若者が増える時代にしなければいけません。最近、どの業界でも、だいたい4社ぐらいに大手がおさまってきています。M&Aを続けて、独占禁止法などの絡みで、それぐらいの規模で最後はおさまるのかもしれませんが、大きい会社ばかりになると、起業意欲がますます衰えます。
アイデアを持った若手が企業しやすい環境(1度や2度会社を倒産させても、再起しやすい環境)を整えていく必要があるなーと感じる、今日この頃です。





